Sly & The Family Stone - You Can Make It If You Try で人生が変わった
前回Sly and the Family Stoneのカバー曲だったつながりで、今回は本家本元、Sly and the Family Stoneの曲をお届けしよう。I Wanna Take You Higherではなく、You can make it if you tryのドラムプレイに注目してみよう。
- アーティスト: スライ&ザ・ファミリー・ストーン
- 出版社/メーカー: エピックレコードジャパン
- 発売日: 1991/08/30
- メディア: CD
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ファンクミュージックの本家本元ということで、プレイヤーもみんな黒人なのかと思っていると、映像で彼らの演奏を見て意外な感じを受ける。このファンクグルーヴは、Greg Erricoという黒人でないドラマーによって繰り出されているのである。グルーヴに白も黒もない! It don't matter if you're Black or White! (Michael Jackson の BLACK OR WHITEより抜粋)。なんだか別のニュアンスがでてしまった。
さて、肝心のドラムのほうはというと、ブラックグルーヴのイメージと反して泥臭みのない実にタイトなプレイとなっている。くわしく見ていこう。
印象的なショートショートなイントロからの基本パターン。
注目すべきは「アタマの一発目に打たない金物」!
金物(かなもの)とは、シンバルやハイハットなどの金属音のする楽器のこと。これを一発目に打たないのが何気に効果的である。スッキリとして、かつアタマのすこぶるナイスなカットギターがシンプルに響き、どこか緊張感をかもしだす。曲が展開した小節の一拍目、手癖で漫然とシンバルをブッ叩いていないだろうか?思考を停止してないか反省させられるようなプレイである。
続いて直後のパターンでは、なんとハイハットが2倍でドン!先程まで4分音符だったのが8分音符に。
そしてここで注目すべきは、「付けない余分なアクセント」である。
注意して聞いてみると、ハイハットにアクセントを一切つけていないのがわかる。これが予想外にグルーヴに影響する。これまた人によっては手癖で8分裏拍を表より弱く叩いてしまうことがある。しかしダメなのだ。全て均等に叩かないと、このグルーヴは実現できない。自分は手癖で漫然と強弱をつけてしまうので、意識して臨まねばならない。手首のストロークで柔軟にコントロールするのでなく、手首をガッチリ固定して腕全体で押し出すようなストロークでやると雰囲気が出るね。
この曲は注目すべきポイントが満載で、一回では書ききれない。そのこと自体が驚くべきことである。次回はいよいよ後半戦。ハーフタイムのショーはきっとあなたの心の中に浮かぶことでしょう。
リア充がひた隠しにしている Duran Duran - I Wanna Take You Higher
このたびはDuran Duranのアルバム「Thank You」から「I Wanna Take You Higher」をおおくりしよう。このアルバムは、全てカバー曲であり、実にたくさんのゲストミュージシャンが参加している。この曲でドラムを担当するのは、ChicやThe Power Stationに参加していたTony Thompson。そのたいへん力強いグルーヴを堪能せよ!
冒頭からのプレイをみてみよう。
ゴーストノートも含めて正確に採譜してみると上記のようになる。なんだか複雑な感じがするのでシンプルに書くと以下のようになる。
ハイハットは8分裏にアクセントを付け、スネアであいているところに適宜32分音符でゴーストノートを入れている形となる。
しれっと楽譜には書いているが、この右足の32分音符のダブルはスゴイ!是非聞いてみて欲しいのだが、これがなんとも「キマっている」!骨子となるファンクグルーヴを失わず、かつ有無を言わさない重厚感!
そして上記冒頭パターンの直後、以下のようにオープンハイハットとスネアのアタマ打ちのパターンとなり、ここでも32分音符のダブルを何度もキメにキメ、その安定的な右足テクニックを見せつけるのである。その右足もさることながら、時に力まかせに打ち付け、時に繊細なゴーストノートを挟み込むような抑揚のある右手左手のストロークがグルーヴを促進する。
「I Wanna Take You Higher」といえば、そう、Sly and the Family Stoneのハードファンク曲である。自分は原曲よりも先にこのカバー曲に出会っていて、原曲を後で聞いたのだが、意外とローファイなサウンドだったのでコレジャナイ感が強かった。カバー曲と原曲を比較すると、原曲の方がいいという意見が多い傾向があるとおもうが、この曲は原曲に大勝利してしまっているのではないだろうか。テクニックはどうあれ、この曲のドラムプレイはノっている。ノリにノッている。ぜひとも静かなところでカナルイヤホンでじっくりと聞いてみてほしい。きっと、じっとしていられないだろうね。the dancers just won't hide!!(Sly and the Family Stone の Dance To The Musicより抜粋)
Michel Camilo - On Fire をオススメするこれだけの理由
軽快なモントゥーノが印象的なラテン系ピアニスト、Michel Camiloのライブ音源からご紹介。North Sea Jazz Festival 2002にトリオとして出演しているものである。ベースはAnthony Jackson、ドラムはこちらもラテン系、Horacio "El Negro" Hernandezだ。
On Fire Live - Michel Camilo - Anthony Jackson - Horacio (El Negro) Hernandez.avi
このライブ音源に限らず、かれのドラムプレイはとってもクレイジーなのである。いったい何が問題なのか?このライブで演奏された神曲「On Fire」の基本パターンをご覧いただこう。
(1:49~)
右手左手は問題なさそうである。テンポが速いので右手が疲れそうだが何とかなりそうだ。一番の問題は、左足で踏んでいるジャムブロックである(譜面の▲)。
そもそも左足でハイハット以外を変則的に鳴らすという事自体があまり無いのもあるが、この2-3クラーベの変則パターンを"常に"安定的に踏みながら右手左手右足を動かすというのは非常に難しい。もしかしたら沢山練習して慣れれば基本パターンだけはいけるかもしれない。しかし、たいへんクレイジーなことに、高速ストロークを含む複雑なドラムソロ(5:52~)の間もこの2-3クラーベを常に安定的に踏んでいるのだ!凄すぎワロタ。これは本当に難しい。参りました。
Youtubeのコメント欄には、「一回押すと2-3クラーベを自動的に繰り返すスイッチがHoracio "El Negro" Hernandezに搭載されてるんじゃないか?!」などと誠にクダラナイ事を書いている人もある。なんでクダラナイのかって?そのスイッチは実際に搭載されているからである!
(1:49~)
ちなみに曲中キメの部分について、どんな譜割りになっているのかなあと気になったところだけ聞き取ったものを上に貼っておきます。ドラムプレイがスゴイとかそうじゃないとかは関係ないのだけれど。繰り返し記号のところは、概ね最初のドラム基本パターンを演奏している部分を示す。実際には繰り返しじゃないのでご了承を。わかりにくい。