生物と無生物と Japan - Visions of China のあいだ
暮も押し迫り、2016年が終了しようとしているところ。個人的には極めて激動の年だったのだがあなたはいかが?先日の引越も無事に後処理が収束したので久々に。
今回は、暮れが押し迫っているのとはぜんぜん無関係に、きっとみんな懐かしい「Japan」のアルバム「Tin Drum」(錻力の太鼓)から「Visions of China」!
「Japan」がバンド名なのだよ!「アジアのどこか知らない国の名前がバンド名ってちょっとひねった感じがよくない?」などといいながら命名したのだろうか。そのあたりのエピソードが有るのかもしれないが一旦置いておこう。
さてドラムの方はどうかというと、Steve Jansenの熟考したプレイが、曲名のイメージ通りの中華風イメージを掻き立てている。コチラ!
(2:12~)
サウンドを聞く限り、生ドラムなのかどうか難しいところだが、微妙にゴーストノートが聞こえるので、おそらく人間が叩いているのではないかと推測している。録音した後で、何かそれっぽいオリエンタルなタムの音をかぶせているようだ。
この曲は何と言っても、チャイナシンバルが肝である。(楽譜で赤字にしているところ。)Visions of ChinaでChina Cymbalとはストレート過ぎるきらいもあるが、まさにイメージ通りの中華風サウンド。4小節目の4拍目裏と次のアタマのチャイナの連続2発がシンプルにカッコイイー!
そして、サビ後のAメロに戻るところ。サビ後に楽器が少なくなっていって、ドラムソロ的になるのだが、これがとってもスペイシー!(空間がある)
(0:57~)
ポコッポコ、ポコッポコ、ポコッポド、、、、、、、、、、、、、、、、
これは!せっかくAメロに戻るってのに2拍以上も何も演奏しない!スペースを活かしたセンスあるプレイである。無駄に叩かない。空間があるからといって埋めなくてはいけない道理はない!
当時この曲をよく聴いていた時期には、身近にチャイナシンバルが無く、またお金もなかったので、割れたシンバルと他のシンバルを重ねて試行錯誤してチャイナシンバルのような音が出る偽楽器を自作したのを思い出す。このサウンドにとても飢えていたのである。いま現在チャイナシンバルを担いで持っていって常時バンドで使っているのは当時の飢えを克服したことによるリバウンドだ。わたしのチャイナシンバルの使い方の原点はこの曲(とKing CrimsonのRed)にある。キミにもきっとあるであろう、そんな原点の曲が!
Missing Persons - No Way Out が好きでごめんなさい
秋を感じる間もなく一気に寒くなりましたね。
さて、今回はまたまた大先生の登場。Terry Bozzioの計画的ドラミングを確認してみよう!
かつてシンセ・ポップと呼ばれたらしいMissing Personsのアルバム「Spring Session M」から「No Way Out」!
Missing Personsでとても元気に歌っているボーカルのオネエチャンは、Terry Bozzioの当時の奥様、Dale Bozzioである。夫婦でバンドに参加していて、夫婦であることによる信頼関係や親密さがなんとなく楽曲にも影響を与えているような気がする。そんなバンドが日本のバンドでもちらほらあるね。
最近知ったのが、Terry Bozzioの現在の奥様は日本人で、Mayumi Bozzioさんらしい。Dale Bozzioの自由奔放な印象が強かったので(?)日本人というのはちょっと驚いた。それにしても、Bozzioという名字はいいね。名乗りたい。結婚してくれ!同性結婚がダメなら養子に入れることもご検討いただきたい。
それでは本曲の冒頭あたりから。4拍子-7拍子という不思議な譜割りで始まる。
見ての通り5拍子やら7拍子やらがさも当然のようにはさまれた構成となっている。それもそのはず、参加ミュージシャンはFrank Zappa関係者がたくさん。ギターはWarren Cuccurullo、ベースはPatrick O'Hearn。Warren CuccurulloとBozzio夫妻が主に作曲している。
打ち込みは使わずすべて生楽器でプレイされているが、全体を通してメカニカルで機械的な印象だ。クラシックなどを除き、ドラム演奏は自由にアドリブを入れることがほとんどなので、楽譜上繰り返し記号が使えることは少ない。楽譜にシッカリと書きおろし、計画されたプレイであることが確認できる。ダル・セーニョとか繰り返しの「1. 「2.って記号初めて使ったね。そんな楽譜に書き下ろされたものを着実に間違えずに演奏する様子はとても真面目である。
今回、なぜだかTerry Bozzioの当時の奥さんが改めて気になってしまったので、またその話に戻るが、現在もDale Bozzioという名前で活動しているという。Wikipediaを見てみると、Terry Bozzioとは1986年に離婚したが名字は残しているのだそうだ。やはり、Bozzioという名字はいいね!自分ももし養子から外れてしまったら残すであろう。
Dale Bozzio - Wikipedia - Personal life
そろそろ Ska-p - La Mosca Cojonera にも答えておくか
¡Hasta la victoria! ということで今回はスペインのスカパンクバンドSka-Pをご紹介。Ska-Pの読み方は「スカップ」や「スカピー」ではなく、「スカーペ」または「エスカペ」が正解だ。「スカピー」はそれはそれで耳に心地よいのだが惜しくも違うのだ。
ちなみに、わたしは 「なぜスペイン語が分かるのか」と聞かれることがある。それはSka-Pが大好きでよく聴いているうちに勉強しようと思ったからなのだった。外国語の習得は、外国のお気に入りバンドを見つけて、あとはDuolingoで補足すれば造作無い!
Ska-Pの楽曲はストレートなロックやパンクが多いのだが、時たま民族音楽的なワールドミュージック的なエスニックなエキゾチックなテイストの楽曲が登場する。それに加え、ボーカルがとんでもなく上手い。そこらのバンドとは一線を画する異次元のボーカルテクニックを持つ。そんな「ただのスカパンクバンドじゃない」感がとても興味をひくのである。なお、ボーカルの芸名は「Pulpul」である。何かの冗談なのか割りと普通なのか理解にくるしむところである。(本名は「Roberto Gañán Ojea」)
そんなSka-Pのアルバム「Planeta Eskoria」の「La Mosca Cojonera」から、ストレートなロックやパンクでないプレイに注目だ。
(00:00~)
曲の冒頭はドラムソロでつかみ、4小節目からラテン風味のパターンが登場する。ブリッジミュート(右手で軽くミュート)しながらポコポコとプレイするギターとからみあってとても軽快なセクションである。
ドラムはなんとなく複雑で手足バラバラのコーディネーションが必要そうに聞こえるかもしれないが、意外にプレイしてみるとそうでもない。ラテン系のノリのパターンにしては難易度は低い部類と思われる。ラテン系のパターンを表現するのに必要なタイミングでアクセントが付けられており、カンタンなのに複雑そうなグルーヴを効果的に醸しだしている。上記楽譜の赤い音符のスネアで特に強くアクセントを付けるのがポイントだ。
Horacio "El Negro" Hernandezのように左足を入れると、更にラテン系なパターンにはなるが、破壊的に難易度がアップするので、このように左足を入れずに雰囲気が出せるパターンはなかなか貴重である。
Horacio "El Negro" Hernandezの破壊的難易度のプレイはコチラの過去記事参照↓
なお、ライブのリハーサルなどで何気なくこのパターンを演奏してみると面白い。ライブハウスのPAさんから「セット全体でくださーい。」と言われたときに、真面目に8ビートをプレイするのではなく、このパターンをやってしまう。それを聴いた対バン(複数バンドで一緒にライブをやる際の、自分のバンド以外のバンドのこと)のドラマーには驚かれ、一目置かれること必至。超絶テクニックを持つドラマーに見えるらしい。ぜひお試しを!