HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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面接官「特技は Jeff Beck - Scatterbrain とありますが?」

今回はJeff Beckの1975年リリースのアルバム「Blow by Blow」(発表当時の邦題は「ギター殺人者の凱旋」だったらしい)から、アノ楽曲をくわしく確認だ!
 

ブロウ・バイ・ブロウ

ブロウ・バイ・ブロウ

 

 

ドラマーはもちろん本ブログで何度か取り上げた、巨匠Richard Baileyだ!

 

巨匠のプレイを解説した記事はコチラや

コチラを参照ください。

 

当アルバムでは、荒削りながら最も勢いのあるRichard Baileyのプレイを聞くことができる。若くしてすでに巨匠の貫禄。アルバムのなかでも、ドラムプレイが気になる曲といえばそう「Scatterbrain」。9/8という少し変わった拍子で聴く者を魅了しているのがコチラのプレイである。

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冒頭はテンポ無し(Tempo rubato)でドラムソロ。テンポ無しでやってるなーと思っていると、いつの間にやら3小節目からIn Tempoで9/8が始動する。3小節目後半はちょっとグダグダになりつつも、4小節目からは本曲の基本パターンが登場している。7小節目からは、運指練習のような怪しいギターのメロディが始まり、ドラムはこのパターンの繰り返しとなる。


この基本パターンを聞いてみると、ハイハットオープンのアクセントが16分裏にあったり、小節の一番最後にはゴーストノート的な3連符がパララと置いてあったりで、まずはこう思うのではないか。パラディドル(右左右右左右左左等、ダブルストロークをいれた手順)を駆使して、さぞかしパラディドルディドルパラパラディドルパラパラパララしているのだろう、と。しかし今回採譜してみてわかったのだが、最後の3連符のRLLを除き、なんとほぼオルタネート(右左交互に叩くこと)で構成されていたのだ!長年謎に包まれていた手品のタネが今ここに明かされました。

 

スネアとハイハットだけを取り出して手順を書くとこのようになる。

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ハイハットオープンのアクセントは左手で叩くことになる。もし右手ハイハット、左手スネアに固定してパラディドルでこなそうとすると、4拍目のスネア3つを打つことができず辻褄が合わないのである。2拍目のスネアのアクセントと同時にハイハットの音がしないことを発見したのが大きなヒントとなった。


そして直後の展開でハイハットでなくライドシンバルを使ったパターンに変わるところがコチラ。

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上記譜面の4小節目(9/8に戻ったところ)から右手がライドシンバルになる。右手をライドシンバルの上空に保持し、左手がライドシンバルに届かないとなると、さすがにオルタネートというわけにはいかない。最初のハイハットの基本パターンとは違って、ここは聞いた印象のとおり右手ライドシンバル、左手スネアに固定してパラディドルで処理している。スネアとライドシンバルだけ取り出して手順を書くとこのようになる。

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このあたりのプレイにおいては、左足で踏み鳴らし続けるハイハットを聞き逃す訳にはいきません。以前取り上げたコチラにも登場する巨匠の得意技である。

 

3小節目、ギターのダブルチョーキング風の(ヘンな)キメの12/8の小節からこの左足ハイハットは始まっている。音量は極めて小さく僅かにしか聞こえないが、これにより効果的にグルーヴがキープされていることが感じ取れる。スネアのゴーストノートと同じ発想である。そしてやはり真似するのはちょっと体力がいるので、まずは体力作り、走り込みから始めなければならないことも感じ取れる。

 

この部分に限らず、曲中ライドシンバルで刻む部分では必ずこのように左足でハイハットを刻んでいるので単純に足癖なのであろう。巨匠に近づくためにも、ぜひ身に付けたい癖のひとつであることは間違いない。

Red Hot Chili Peppers - Stone Cold Bush はアメリカなら余裕で逮捕されるレベル

Red Hot Chili Peppers - Stone Cold Bush

今回はみんなだいすき、Red Hot Chili Peppersの楽曲を取り上げよう!!


レッチリ史上初めてのヒットとなった1989年のアルバム「Mother's Milk」から、「Stone Cold Bush」だ!

 

母乳

母乳

 

 

当アルバムは収録されている音の音圧が若干弱いようで、聞く際にはボリュームを少し上げなければならない。しかし、ボリュームを上げて密室で長時間聞いたりすると、これがまた心が不安定になりそうな凶々しいサウンドが激しく緩急をつけて連続するため、トランス状態にトリップしがちなので注意だ。適度に換気し、音小さめで聞きましょう!

 

ベースとドラムキックだけで織りなす16分裏の小技が光るキメ

さて「Stone Cold Bush」の冒頭のドラムプレイはこのようになっている。

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イントロはなんと4小節だけ。テンポが速いので曲が始まったと思ったらもうAメロに入っている。早い展開だ。2小節目の奔放なワチャワチャワチャワチャにドラムが「タチーチーチーチ」で応じ、4小節目・8小節目の「てれ~てれ~て~てれ~てれ~て~」の滑らかなキメには、滑るようにドラムを変化させ合わせているところが気持ちいい。みんなで合わせアンサンブルを楽しんでプレイしたい部分だ。

 

6小節目の3・4拍目は、レッチリお得意、いやFlea本名 Michael Balzary)お得意の、ベースとドラムキックだけで織りなす16分裏の小技が光るキメ。そのグルーヴとテクニックと二人の確かなアンサンブルに思わずウナってしまう箇所となっている。こんなベースとドラムがいればこりゃ売れるだろうよ!テンポも速いし、彼らみたいにバッチリ合わせてグルーヴを保つには、ベースとドラムの巡り合わせ、相性が良いということも必要となろう。

 

8分音符を使った安定感を醸し出すプレイ

続いてサビの「She's Stone Cold Bush!」と歌っているところのプレイ。

 

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本曲のドラムの基本パターンでは、ほぼ全ての小節の1拍目は「ドッッド」とキックしている。Chad Smith(本作のドラマー)がファンキーなパターンを演奏する際の足癖だと思われる。

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一方で、ここのサビだけはキックのパターンを意図的に変え、8分音符を使った安定感を醸し出すプレイとなっている。1、2小節目では、1・3拍目に8分二つのキック。3、4小節目では、また少し変化し、ギター・ベースのリズムに合わせた8分のキックに加え、先程登場したベースとドラムキックだけで織りなす16分裏の小技が光るキメ。いやあ凝ってるなあ

 

 

この3、4小節目、どこかで似たものを聞いたことがあったと思い考えたところ、懐かしの東京事変の曲であることがわかった。なんだか心地よいリズムだ、と思ったのは、懐かしい気持ちと重ね合ったからだろうか。


すなわちコチラの、0:52 - 0:551:05 - 1:08の部分が似ていると思ったのだがどうだろうか。

 

 

細かすぎて伝わらない予感!

 


そして本曲に戻って一番最後のところのプレイをオマケで載せておこう。

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テンポがモタっている?

本曲は3分しかない短い曲だが、ナイスなキメや構成が凝縮していて非常に魅力的な曲である。バンドでこのままコピーしてみたくなる。ただ一つだけ惜しいのは、右手ライドシンバルのパターンに移行するギターソロ(1:32-)のあたりで、テンポがほんのわずかにモタっており、ほんのわずかに楽曲の推進力が失われているところ。

 

、、などと思ってしまうのは優等生の完璧主義。こまけぇこたぁいいんだよ!こまけぇことは置いといてただひたすらに爆音で聞いてトリップすべし!!

 

Talco - Signor Presidente と聞いて飛んできますた

今回はイタリアンラテンオルタナティブバンド、Talcoのプレイを取り上げよう!

 

Talcoがどんなバンドなのか改めて調べてみたところ、The ClashSka-Pの影響を受けているとのこと。以前取り上げたSka-Pの影響があるのだと知って、自分はこのサウンドに何故か引っ掛かるものがあるのだなあと思った次第である。

 

彼らのサウンドは「Patchanka」と呼ばれる一つのカテゴリーらしい。Patchankaというのは、Latin alternativeまたはalterlatinoのことで、オルタナティブ・ロック、エレクトロニカ、メタル、ニューウェーブ、ポップ・ロック、パンク・ロック、レゲエ、スカ、ラテンアメリカの伝統音楽などをミックスしたサウンドを特徴とするらしい。なるほど、分からない!

 

(前回のSka-Pの記事はコチラ )

yujihb.hatenablog.com

 

Talcoの楽曲は基本的にパワーコードなギターの感じで、各曲聞きくらべてみると似通った構成のものが多いように思われる。コード進行は、Im - ♭VI - ♭VII - Im が複数の曲で多数登場する(例:A#m - F# - G# - A#m)。少し異常とも言える偏りで登場する。だが不思議なことに、どの曲も個性的で、ホーンセクションがシッカリと入り、「ライブで一緒に歌いたい!」と思わせる、著しくキャッチーなメロディが特徴的である。

 

実際、Talcoのライブ盤「10 Years – Live in Iruña」では、お客が前編に渡って一緒に歌いまくる。これはスゴイ。お客が全メロディを漏れなく歌っているのである。ホーンだけのメロディで歌詞がないパートももちろんのこと、極めつけはギターリフをそのまま歌っているのである。でも、気持ちが分かります。一緒にライブで歌いたい!サイコー!!

10 Years

10 Years

 

 


そんなキャッチーなバンドTalcoからは、アルバム「Tutti Assolti」から「Signor Presidente」でのプレイをお送りしよう。

Tutti Assolti

Tutti Assolti

 

 

基本パターンはメタルやパンクでお馴染みのドンタンドドタンの高速パターン、下記譜面の17小節目のパターンである。(なんて呼ぶのだったかな、ツービート?)基本パターンのバスドラ2連発が少したどたどしいので、もしかしたらツインペダルでなく片足でダブルかな?


その後、曲が一巡して、突然超カッコイイ印象的なホーンのセクションに切り替わり、ハイハットオープンを入れたスカ風パターンになる部分のプレイ!

(4:28~)

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ココを取り上げたのは、9小節目から始まるパターンが少し気になったからだ。なんでもなさそうであるが、実は9小節目以降の小節の1拍目と2拍目のスネアのアクセントの位置が少しトリッキーである。

9小節目に来るまでは、2拍目と4拍目がバックビートだが、9小節目以降の小節では2拍目裏4拍目にバックビートがあり、右手のハイハットと一致するところとしないところが混在する。おそらくはドラマーの手癖であると思われる。狙っていかないとアワアワ、アレレー?してしまう感じになっている。

今回ドラムプレイのかなり細かいところに注目したのは、一聴して「採譜して整理しないと自分がマネできない」と思ったからである。自分用メモである。採譜して整理できて、自分がプレイできるようになった。良かった良かった。

 

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