HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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諸君、私は 上原ひろみ - Kung-Fu World Champion が好きだ

夏、暑くなってきましたね。夏といえばフジロックですが、みなさま参加されましたでしょうか。 

この度は世界中で数々の賞賛を受けている、上原ひろみの登場!Ponta Boxをもっとさらにワールドクラスにしたようなサウンドである。好きです。彼女のアルバム「Brain」から「Kung-Fu World Champion」をご紹介してみよう。「Kung-Fu World Champion」って曲名がもう聴く前から期待させる。そしてなんとその期待に応えている曲であること! 

Brain

Brain

 

 

ドラマーは、バークリー時代の同僚(?)のMartin Valihoraである。Youtubeに多数ビデオがアップロードされているので是非チェックいただきたい。そのスピードとグルーヴを兼ね備えたプレイに飲み込まれ、思わず数時間は見続けてしまうので時間のある時に見始めることを推奨!

 

初めて上原ひろみを聴いたのは、おそらく2005年のフジロックの会場でのライブであった。偶然聴いたのであったが激アツステージであったことを覚えている。しっとりピアノジャズに加えて、本曲のような仕掛けいっぱいの曲に熱い気持ちが高まりました。ドラムの音色、とくにスネアの音色が著しく軽快であったことが印象に残っている。後にCDで聴いてみるとほとんど同じ音が収録されていたので、これが彼が出したい音で、ちゃんと調整しているのだろうなあと思ったのだった。どうやってライブでこの音を出せるのだろうか。あのスネアでなければ出ないのだろうか。ぜひ調整の仕方を知りたいのであった。

 

さて、本曲を聴いてみると、3:10くらいからアッチェレランド[accelerando]、平たく言うとテンポが早くなっていき、かなりエキサイティングな速度に変化する。3:44からのギターソロみたいなキーボードソロがこれまたエキサイティング。続いて非常にテクニカルなドラムソロがやってきて、その後の高速のキメの部分に注目したい。

 

(5:16-) 

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1、2小節目までがドラムソロ。3小節目以降はバンド全体がこのリズムで合わせていく。

こういうキメっていいよね~。すごい緊張感。ベースとキーボードはリズムに加えて音程も間違ってはならないのだから。大変だよね~。音程の出る楽器のかたに敬意を表します。ドラムはタムとスネアを入れ替えたって間違いってことにはならないので。恐れ入ります。この高速のテンポのキメの最後は、15、16小節目のように2拍3連を4分音符に読み替えるメトリックモジュレーションになっていると思われる。

高速のキメがバッチリ決まりに決まって、次の展開で一気にもとのテンポに戻る! 

 

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フジロックのライブのときには、この激しい緩急を見せる17小節目のタイミングでオーディエンスから最大の歓声が上がったことも記憶している。魅せられました。また、細かい話だが18、19小節目には、ほんのわずかにボンゴのような音が入っており、このゆったりグルーヴを後押ししているのでお聴き逃しなく!

なお、15、16小節目は「メトリックモジュレーションを駆使しテンポを変化させる極めて高度な楽曲構成なのである」のかと思いきや、もしかしたら「ジャン・ジャン・ジャン・ジャン・ジャン・ジャン・ジャン・ジャン・ハイッ!!」などとアイコンタクトだけで合わせているかも。真相はいかに!

 

「Brain」の次にリリースされたアルバム「Spiral」では、なんと「Return Of Kung-Fu World Champion」というこれまた血が騒ぐ仕掛けが満載の曲が収録されている。とってもおすすめです。上原さん、次はぜひとも「Return Of The Son Of Kung-Fu World Champion」をお願いいたします。

 

(2018/4/10 キメ直前部分の譜割りは7/16でなく3/8と思われるので修正)

現代は Jimi Hendrix - Fire を見失った時代だ

Let me stand next to your fire!ということで、今回はまたまた古いところだが、Jimi HendrixFireーーーーーーーー!

ドラムをたしなむ者としては外せない、伝説的プレイを見てみよう!

 

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伝説的プレイを残したそのドラマーはMitch Mitchell。なんとなくノリ一発で手癖な人をイメージするのだが、その個性的で得体の知れないプレイが、多くのドラマーに影響を与えたと思われる。後世への影響力はやはり偉大というべきものがある。

 

 

さてイントロから行ってみよう。曲の始まりは、極めてシンプルなフレーズをギターとベースが打ち出す。ドラムはスネアとタムを使ってその間を埋めるように色んなことをする。曲が小節アタマから始まっていないので、拍を取りづらいかもしれない。

 

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次にイントロの直後、歌が入ってきてドラムパターンが始まるところ。ギターとベースがこれまた単純な「ンデデデデン」のリフをスペイシーに繰り返す。ジミヘンのソウルフルな歌とドラムとがそのスペースを使ってアピールしていく。歌とドラムの掛け合いのような雰囲気となっている。

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何が偉大なのかっていうと、譜面赤字にしているところである。バックビートを変化させるこのドラムパターン自体が本曲を特徴づける核となる最重要プレイなところである。Fireといえばこのバックビートの変化である。後世においてFireのカバー曲は数知れず、録音して収録されない演奏ともなれば無数にあると思うが、これは必ずやっているのではないか。これがなければFireでは無い!!


同じく特徴的なのはすぐ直後のこのプレイ。左手スネアで16分裏の空いたところを埋めるフレーズである。なんでもないようでいて、こちらのフレーズもFireのカバー演奏時には必達のプレイである。

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またまた直後がコチラ。

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Mitch Mitchellといえばこのたまに挟まれる素早い3連符を含むフレーズ「タララタン!」。手癖で時折登場するので、彼になりきって演奏する際にはコチラもまた必達である。4つ目のアクセントを右手で終了させてバランスをとるために、左手2連打のダブルストロークをはさむ手順も考えられるが、そんな軟弱なものを使ってバランスをとってはならない!Fireに安定を求めるなんてもってのほか!アンバランスなどお構いなし、バッチコイってなもんだ。魂の男気シングルストロークで左手アクセントでシメてやれ!(右利き用で記載しています。)

 


あらためてジミヘンの楽曲を聴いてみると、月並みながら、ほんとに3人でやっているのかって思ってしまうね。The AnimalsのベーシストだったChas Chandlerが「ギタリストが3人くらい同時に演奏しているのかと思ったが、実際にはジミ1人だけと知り驚いた。」と言ったそうなので、ジミヘンの寄与する部分が多いのかもしれない。ただやはり、スリーピースとは最小にして無限大の可能性が広がっているのだなあと改めて思う。と同時に、かつてスリーピースでやっていた若い時代に感じていた無限大の可能性をも思い出す。

 

先日、かつてスリーピースバンドでレギュラー出演していた新宿JAMが、なんと今年をもって閉店すると聞いた。もうすでに泣きそうである。そして新宿JAM閉店につき今年12月に当時のバンドで緊急出演予定だ!

 

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結論:Prince - Everywhere が想像以上に凄い

やあ!いよいよ暑くなってきて夏はすぐそこ、と思へば寒が戻り、衣替えすべきかそうでないか迷う季節ですね。


さて今回は、昨年惜しくも亡くしてしまったPrinceのアルバム「The Rainbow Children」からもう一曲紹介である。 楽器をほとんど所有しないわたしがシグネチャースネアを所持している、JBことJohn Blackwellのプレイを再確認するのはこの曲「Everywhere」。John Blackwellの摩訶不思議アドベンチャーを体験せよ!

 

レインボー・チルドレン

レインボー・チルドレン

 

 

以前の記事はコチラ。

yujihb.hatenablog.com

 
曲の始まりは、透き通るRhodesに乗せておねえさんの歌が透き通る。そこへベースが割り込んでいく。そしてデジタルかつ野蛮なオーケストラヒットが入ったら、ドラムのフィルインからイントロがスタート!

 (00:20-)

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特筆すべきは曲中で基本パターンとなっている5小節目以降のこのパターンである。非常に独特である。左足のハイハットが全て8分裏であれば、ありそうなパターンではあるが、ここでは2拍目裏でなくアタマに踏んでいて、ラテン風のようなそうじゃないような一風変わったものとなっている。一体全体どんなトレーニングを積んだらこうなってしまうのか、もはや不可解である。こんなに独特なのにヨレたりせず迷い無くプレイされているので、JBのなかでは自然なプレイなのかもしれない。

テンポがかなり速いので2拍目の右足ダブルもそうとうに大変だ。すくなくともわたしはこのスピードで一曲をとおしてキープできないと宣言しよう。堂々たる敗北宣言だ!



お次は、たいへん彩りがありエキサイティングな内容となっているドラムソロを確認!

(01:04-)

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1・2小節目は6連符だけで押し切るタイプのソロ。6連符の1個目と6個目にアクセントをつけ、タムを叩いたりシンバルを叩いたりして変化を付ける。2小節目では、とても人間とは思えないところで左足のハイハットを踏んでいるが、ハイハットオープン+キック→即時ハイハットクローズ、をプレイするときの両足の動きがこんな感じであるために踏んでしまっているだけと思われるのであまり気にしなくてよいだろう。

4小節目ではJBの得意技、フロアタム右手とオープンハイハット左手の術が思わず飛び出す。5小節目、6小節目にかけては、フロアタム右手とオープンハイハット左手、スネア右手とオープンハイハット左手、をポリリズミックに高速で繰り返すフレーズが刺激的である。譜面上赤字にしている音符が、バスドラではなくフロアタム右手となっているのがポイントである。

そして8小節目、怒涛のスネア連打でドラムソロが締めとなる。2拍目は普通に6連打だと思ったのだが、スローで聞いてみたところさらにもう1打スネアの音があり、なんと7回叩いていることがわかった。7連符としてもよいが上記楽譜では32分音符4つで書いている。いずれにせよオルタネート手順で力いっぱいスネア連打をしてもらえばOKである。



そして曲のアウトロに入る直前の部分。これまた大変なことになっている。

(01:48-)

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1・2小節目が基本パターン部分。3・4小節目がアウトロに入るためのウワモノのキメの部分である。この3・4小節目のキメに呼応して変化したドラムがご注目ポイントだ。このテンポで実現してしまうものだから、楽譜の見た目の印象とは違ってほとんど真似が出来ないプレイとなっている。何を言っているのかわからねーと思うが、フィルインだとか一時的なパターンの変化だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ基本パターンから変化しすぎて両足に革命が勃発しているといった状況である。


突然話し変わるが、先日私のバンドが初のワンマンライブを決行した。「ここで使わなきゃいつ使う」とばかりに普段スタジオに持っていかないJBのシグネチャースネアを持参。一般的なスネアの口径14インチよりも口径が小さく(13インチ)、少し胴が深い(6.5インチ)、そして何よりもアピールするのが胴に貼り付けてある巨大な「JB」のマークである。

普段のライブではライブハウスに置いてあるスネアを借りて使っており、ライブハウスによってはヘッドやスナッピーベルトがバカになってて調整が効かなかったりする場合もある。その点やはり自分のスネアを持参しているとひとつ安心。先日のワンマンライブではJBのスネアでJBをイメージしてプレイしたが、果たしてお客さんに届きましたかどうか?!

 

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