HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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よろしい、ならば ファイナルファンタジーⅤ - ビッグブリッヂの死闘 だ!

今回は何を血迷ったのかゲーム音楽の打ち込みドラムプレイを徹底解説!もしも生身のドラムでカバーするとしたら、という観点で紹介してみよう!

 

音楽を聞いても、良いとか悪いとか何とも思わなかった子供の頃、いくらゲームにのめり込んだとしても音楽がどうということはなかった。そんな中、ファイナルファンタジーの中の曲は子供ながらにカッコイイとか良い曲だと感じたことを覚えている。たまたま自分が少しずつ成長し、ゲームの中で流れる音楽も注意して聞くようになったたタイミングだったのかもしれないが。ファイナルファンタジーⅤのなかでも、特に今現在も神曲として名高い「ビッグブリッヂの死闘」!英語表記だとBattle With Gilgameshなんだね。当時わたしは既にドラムを始めていたので、これを生ドラムでマネをしようとしたが難しすぎて断念したことを思い出す。

 

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この打ち込みドラムを譜面にしてみるとこんな感じだ!

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ピコピコピコピコデジタル感あるフレーズではじまる。パイプオルガンみたいな音色で、どことなく格調高い感がある。5小節目からのドラムのドッドコドッドコドッドコドッドコでは、シンバルと合わせてタムとスネアが重なっている。バスドラは入っていない。生ドラムでこのままやるのは不可能ではないが、タムとスネアの左手の動きがかなりキツい。もしやるとしたらツーバスでドッドコドッドコしつつ両手でタム+シンバル、スネア+シンバルをプレイすると生身のドラムでも雰囲気が出せるであろう。

19小節目のフィルインのフレーズは曲中何度も登場する。4拍とも全てスネアが入っているのは生ドラムではまず発想しないフレーズである。スネアの間をタムが高い方から低い方に回っていくサウンドが特徴的で、なんだかドラムがスゴイ、という凄みを与えるフレーズである。生ドラムだとかなり厳しくなってしまう原因となっているのが、2拍目4拍目に入っているシンバルである。これを再現するためには、「タムが高い方から低い方に回っていく感」が失われてしまうが、ここは涙をのんでタム部分をツーバスで処理するのが現実的な解となろう。

21小節目はイントロから次の展開に移るための重要な小節。ドラム以外のパートがなくなり、ハイハットチーチキチーチキチーチキチーチキだけが残る。緊張感を表現しつつなめらかに次の展開につながる。

 

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22小節目からは、ハイハットのチーチキチーチキに、スネアとバスドラが加わっているこのパターン。当時わたしは、人間がこの部分を演奏するのは全くの不可能だと思っていた。チーチキをこのスピードで演奏するには、どうしてもチーチキの「キ」を左手で処理する以外に無いと思いこんでいたからだ。しかしいま改めて見てみるとそうでもない。一つの方法としては、チーチキの二つ目の「チ」は左足で踏んでハイハットクローズをするのであるから、ここの一手を省略して、最初の「チ」と最後の「キ」だけを右手で演奏すれば良い。かなりのスピードなので、Tony Williamsさながらの安定した右手と手足のコーディネーションが必要となる。Tony Williams LIFETIMEの楽曲「Fred」と「Mr. Spock」で、これに極めて似たチーチキのプレイをしており、不可能ではないことが分かる。

 

Lifetime: The Collection

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22小節目から最後はダル・セーニョで戻ってきて、この部分がずーっと繰り返しとなる。21小節目までのイントロ部分は、ゲーム本作で言うところのビッグブリッヂ(ブリッジ?)に入ったところで一回だけ。記憶が確かなら、上にスクロールで進んでいく中で雑魚キャラが度々襲ってきて、奥の方でギルガメッシュとご対面という場面だ。ギルガメッシュは敵のはずなのに沢山喋る。さらにそもそも倒す必要が無い。このようなイベントは当時のRPGからするとかなり画期的であったと思う。なんだかボスっぽいキャラだし、初めて出会ったときにはボス戦のつもりで全力で攻撃して、それこそ銭投げさえ辞さずに攻撃したりするも、あっさり逃走(?)。虚を突かれたよね~。

 

ファイナルファンタジーはⅧを最後にプレイしていないので、その後の動向は詳しくないのだが、ビッグブリッヂの死闘もその後のシリーズで繰り返しアレンジされて登場しているようだ。Youtubeでいくつか試聴してみたものの、やはりゲームに熱中しながら聞いたバージョンが自分のベストバージョンであることは揺るぎない。あなたのベストバージョンはファイナルファンタジーいくつ!?

 

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諸君、私は 上原ひろみ - Kung-Fu World Champion が好きだ

夏、暑くなってきましたね。夏といえばフジロックですが、みなさま参加されましたでしょうか。 

この度は世界中で数々の賞賛を受けている、上原ひろみの登場!Ponta Boxをもっとさらにワールドクラスにしたようなサウンドである。好きです。彼女のアルバム「Brain」から「Kung-Fu World Champion」をご紹介してみよう。「Kung-Fu World Champion」って曲名がもう聴く前から期待させる。そしてなんとその期待に応えている曲であること! 

Brain

Brain

 

 

ドラマーは、バークリー時代の同僚(?)のMartin Valihoraである。Youtubeに多数ビデオがアップロードされているので是非チェックいただきたい。そのスピードとグルーヴを兼ね備えたプレイに飲み込まれ、思わず数時間は見続けてしまうので時間のある時に見始めることを推奨!

 

初めて上原ひろみを聴いたのは、おそらく2005年のフジロックの会場でのライブであった。偶然聴いたのであったが激アツステージであったことを覚えている。しっとりピアノジャズに加えて、本曲のような仕掛けいっぱいの曲に熱い気持ちが高まりました。ドラムの音色、とくにスネアの音色が著しく軽快であったことが印象に残っている。後にCDで聴いてみるとほとんど同じ音が収録されていたので、これが彼が出したい音で、ちゃんと調整しているのだろうなあと思ったのだった。どうやってライブでこの音を出せるのだろうか。あのスネアでなければ出ないのだろうか。ぜひ調整の仕方を知りたいのであった。

 

さて、本曲を聴いてみると、3:10くらいからアッチェレランド[accelerando]、平たく言うとテンポが早くなっていき、かなりエキサイティングな速度に変化する。3:44からのギターソロみたいなキーボードソロがこれまたエキサイティング。続いて非常にテクニカルなドラムソロがやってきて、その後の高速のキメの部分に注目したい。

 

(5:16-) 

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1、2小節目までがドラムソロ。3小節目以降はバンド全体がこのリズムで合わせていく。

こういうキメっていいよね~。すごい緊張感。ベースとキーボードはリズムに加えて音程も間違ってはならないのだから。大変だよね~。音程の出る楽器のかたに敬意を表します。ドラムはタムとスネアを入れ替えたって間違いってことにはならないので。恐れ入ります。この高速のテンポのキメの最後は、15、16小節目のように2拍3連を4分音符に読み替えるメトリックモジュレーションになっていると思われる。

高速のキメがバッチリ決まりに決まって、次の展開で一気にもとのテンポに戻る! 

 

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フジロックのライブのときには、この激しい緩急を見せる17小節目のタイミングでオーディエンスから最大の歓声が上がったことも記憶している。魅せられました。また、細かい話だが18、19小節目には、ほんのわずかにボンゴのような音が入っており、このゆったりグルーヴを後押ししているのでお聴き逃しなく!

なお、15、16小節目は「メトリックモジュレーションを駆使しテンポを変化させる極めて高度な楽曲構成なのである」のかと思いきや、もしかしたら「ジャン・ジャン・ジャン・ジャン・ジャン・ジャン・ジャン・ジャン・ハイッ!!」などとアイコンタクトだけで合わせているかも。真相はいかに!

 

「Brain」の次にリリースされたアルバム「Spiral」では、なんと「Return Of Kung-Fu World Champion」というこれまた血が騒ぐ仕掛けが満載の曲が収録されている。とってもおすすめです。上原さん、次はぜひとも「Return Of The Son Of Kung-Fu World Champion」をお願いいたします。

 

(2018/4/10 キメ直前部分の譜割りは7/16でなく3/8と思われるので修正)

現代は Jimi Hendrix - Fire を見失った時代だ

Let me stand next to your fire!ということで、今回はまたまた古いところだが、Jimi HendrixFireーーーーーーーー!

ドラムをたしなむ者としては外せない、伝説的プレイを見てみよう!

 

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伝説的プレイを残したそのドラマーはMitch Mitchell。なんとなくノリ一発で手癖な人をイメージするのだが、その個性的で得体の知れないプレイが、多くのドラマーに影響を与えたと思われる。後世への影響力はやはり偉大というべきものがある。

 

 

さてイントロから行ってみよう。曲の始まりは、極めてシンプルなフレーズをギターとベースが打ち出す。ドラムはスネアとタムを使ってその間を埋めるように色んなことをする。曲が小節アタマから始まっていないので、拍を取りづらいかもしれない。

 

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次にイントロの直後、歌が入ってきてドラムパターンが始まるところ。ギターとベースがこれまた単純な「ンデデデデン」のリフをスペイシーに繰り返す。ジミヘンのソウルフルな歌とドラムとがそのスペースを使ってアピールしていく。歌とドラムの掛け合いのような雰囲気となっている。

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何が偉大なのかっていうと、譜面赤字にしているところである。バックビートを変化させるこのドラムパターン自体が本曲を特徴づける核となる最重要プレイなところである。Fireといえばこのバックビートの変化である。後世においてFireのカバー曲は数知れず、録音して収録されない演奏ともなれば無数にあると思うが、これは必ずやっているのではないか。これがなければFireでは無い!!


同じく特徴的なのはすぐ直後のこのプレイ。左手スネアで16分裏の空いたところを埋めるフレーズである。なんでもないようでいて、こちらのフレーズもFireのカバー演奏時には必達のプレイである。

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またまた直後がコチラ。

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Mitch Mitchellといえばこのたまに挟まれる素早い3連符を含むフレーズ「タララタン!」。手癖で時折登場するので、彼になりきって演奏する際にはコチラもまた必達である。4つ目のアクセントを右手で終了させてバランスをとるために、左手2連打のダブルストロークをはさむ手順も考えられるが、そんな軟弱なものを使ってバランスをとってはならない!Fireに安定を求めるなんてもってのほか!アンバランスなどお構いなし、バッチコイってなもんだ。魂の男気シングルストロークで左手アクセントでシメてやれ!(右利き用で記載しています。)

 


あらためてジミヘンの楽曲を聴いてみると、月並みながら、ほんとに3人でやっているのかって思ってしまうね。The AnimalsのベーシストだったChas Chandlerが「ギタリストが3人くらい同時に演奏しているのかと思ったが、実際にはジミ1人だけと知り驚いた。」と言ったそうなので、ジミヘンの寄与する部分が多いのかもしれない。ただやはり、スリーピースとは最小にして無限大の可能性が広がっているのだなあと改めて思う。と同時に、かつてスリーピースでやっていた若い時代に感じていた無限大の可能性をも思い出す。

 

先日、かつてスリーピースバンドでレギュラー出演していた新宿JAMが、なんと今年をもって閉店すると聞いた。もうすでに泣きそうである。そして新宿JAM閉店につき今年12月に当時のバンドで緊急出演予定だ!

 

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