HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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2時間で覚える Whiplash - Caravan 絶対攻略マニュアル

今回は映画音楽からチョイス!

ドラムが中心になっている映画はそれほど多くない。そんななか、3年か4年前ににわかに脚光を浴びた映画といえば、Whiplash(邦題:セッション)!!

もちろんわたくしも鑑賞しました。ドラマーが目を凝らして観ると少し気になるところがあるものの、何らか心が動かされるよい映画であった。いったん映画評論はせずに、その心を動かす音楽にフォーカスだ! 

セッション(字幕版)
 

あろうことか、ドラムが勝手に演奏を始めてしまう

ラストシーンで演奏されるのがCaravanで、このドラムプレイがたまらなくグルーヴィー!泥臭くなくスカッとするビッグバンドアレンジである。ちょっとしたことでスグに怒る指揮の人がMCで話している途中で、あろうことか、ドラムが勝手に演奏を始めてしまうという激アツのシーンがコチラ!!

颯爽とクールな演奏の背後に隠し持つ熱い感情!数あるCaravanのカバーの中でもベストなアレンジではないだろうか。カッコE~。楽譜にするとこんな感じだ!!!

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概ね1、2小節目のパターンが基本パターンとなっており、たまにタムがトコトコと入ったり、3連符真ん中に入ってビートを揺らすなど味付けしている。1、2小節目のパターンがあまりにオイシ過ぎて、味付けがなくともごはんがいっぱい食べられそうである(1、2小節目のパターンだけで十分にカッコいい、ということ)。

少し譜面が見づらいので1、2小節目のパターンのエッセンスだけを抜き出すと下図のようになる。右足のキックのパターンを正確に踏んで、2拍目の16分裏のスネアアクセントをビシッとグルーヴに乗せていきたい。

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ハイハットが異なる3つのパターン

またまた細かいことであるが、基本パターンが同じく繰り返されているように聞こえて、じつは左足のハイハットを踏むパターンが3つ登場する。曲イントロのように4分音符で踏んでいるところと、ジャズ風に4分音符裏で踏んでいるところ(図A)と、盛り上がり過ぎて8分音符全部踏んでいるところ(図B)がある。どれもトップシンバルのカップが強くリードする4ビートであることは変わらないが、その微妙なグルーヴの差異を確認してみると面白い。図Bのパターンが一番勢いを感じるね。

(図A)

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(図B)

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些細なことを気にし過ぎ!

なお、この動画の0:51あたりでフィルムが逆回しになっているのにお気づきだろうか。Youtubeのコメントで指摘しているすごい観察力の人がいた。なぜそうなっているのか謎である。また0:46では、ドラムの彼が指揮者に「Fxxx you!」といっているらしいのだがあまりピンとこなかった。さらに、0:21に一瞬だけベースが演奏している様子がうつってしまっているがストーリー上これはありえない。。。よく見つけるものだ。

そういえば、演奏の映像と鳴っている音とのズレが大きくて興ざめしてしまったギター弾きの恋という映画を思い出した。ギター運指が鳴っている音と違ったり、ジャンゴ・ラインハルトのスタイルが考慮されていなかったりで気になってストーリーが頭に入らなかったよ!我ながら些細なことを気にし過ぎ。Whiplashも、いちドラマーとしてはドラム演奏の映像と鳴っている音とのズレがやはり見えたが、映画全体に影響があるものではまったくなかった。まだ観てない人はオススメなのでぜひ観てね!

あなたが Boz Scaggs - Lowdown を選ぶべきたった1つの理由

オイーッス!!ある教育番組の冒頭で、オイーッス!!とあいさつするのだが、すこし粗野な言い回しと思うので、教育番組でこれを毎回繰り返すのが良く許可されたなあと思う今日このごろ。NHKも変わりつつあるのだろうか。 

みいつけた!うたってあそんで★オイース! ([バラエティ])

みいつけた!うたってあそんで★オイース! ([バラエティ])

 

 
その話とは無関係に、今回はBoz ScaggsBoz ScaggsといえばおそらくWe're all aloneが最も有名であるが、この度はドラマーJeff Porcaroを堪能するためにも、Lowdownのドラムプレイを確認!Lowdownは初回リリースはアルバムSilk Degreesで、またアルバムHITS!にも収録されている。このアルバムHITS!のジャケット写真もまた有名で、この服装とたたずまいをインチキマジシャンと称する人もいる。

ヒッツ!

ヒッツ!

 

 さてLowdownのドラムプレイは全編を通して2つの別録したドラムのトラックが重なっている。右と左に概ねキレイに分離されており、右や左にパンするか片方のイヤホンだけでそれぞれ聴いてみると分かる。曲イントロのプレイはこのようになっている。

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ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のドラマー」に選ばれているのも当然である。2つの別録したドラムのトラックなのに、イントロ部分だけでなくこの後もずっとほとんどズレることがない。推進力も落ちることはなくグルーヴィーで、歌ものとしての違和感がないのは驚異的である
すこし細かく言うと、右パートのスネアバックビート直後のスネアゴーストノートがなかなかにスゴイ。左手でアクセントを付けた直後に一瞬にして音量を落とし、かつシッカリと16分のタイムにノッたゴーストノート。熟練のダイナミクスコントロールである。また16分のキックも含め全ての音符が正確無比で盤石の安定性。何気ない風をよそおってこの正確さは異常。この譜面のような細かい16分音符のプレイを2トラックで録音してズレないというのは職人技である。ドラマー諸氏にはお分かりであろうが、別録トラックと常に完全に一致させるのがどれだけ大変か!2トラックを重ねようとなったら、一つのトラックでスネアバックビートを入れ、もう片方のトラックではスネアバックビートを避けたくなるのが人情と言うものであるJeff Porcaroそんな凡人を尻目に2トラック両方に録音!


そういえばボズ・スキャッグスとカタカナで書くとドコに濁点があるかわかりにくいね。ボズ・スギャッグス、ボズ・スキャックズ、ボス・ズキャッグス。なお、次の例は全て誤りだそうです:サンドバック、ドラックストア、アボガド、ビッグス粒子、デビッドカード、スティーブ・ジョブス、アイポット、ブルドッグソース株式会社、ビッグカメラボズ・スキャッグス濁音 - いじわるな検索にエントリーが必要である。

せっかくだから James Brown - Sweet Soul Music について語るぜ!

やあ!ゴールデンウィークということでご機嫌いかが?すこぶる快晴なゴールデンウィークを過ごしているところ、ゴキゲングルーヴをきいてもっと快活に!今回は音楽のグルーヴを語る上で外すことのできないJames Brownの楽曲を聞いてみよう!!

 

ライヴ・アット・ジ・アポロ Vol. II

ライヴ・アット・ジ・アポロ Vol. II

 

 James Brownのライブ盤「Live at the Apollo, Vol. II」から「Sweet Soul Music」がこのところの快晴のような極上のグルーヴとなっている。Sweet Soul MusicはArthur Conleyの楽曲で、YoutubeにてArthur Conleyのバージョン(オリジナルバージョン)が聴ける。オリジナルバージョンからしすでに極めて上質のソウルなのであるが、Live at the Apollo, Vol. IIではJames Brownのバンドによってさらなるグルーヴを追加したカバー演奏となっている。

 

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最初は楽しげなホーンのテーマ。「Do you like good music」のフシの数が入り切らないのか、Aメロ直前に2/4がはさまっている模様。ここではその2/4のAメロ直前のドラムフィルがとってもイイね。スネアいっぱーーーつ!!ヘンにひねらない。シンプルに歌を聞かせればよいのだ。ということで私がプレイするときもスネアいっぱーーつのドラムフィルを多用している。

 

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次に、歌とドラムとパーカッションだけで掛け合いとなるところ(上記譜面の3小節目から)。歌が「gotta gotta feelin'」などなど変則的に歌うところでドラムのスネアバックビートもこれに合わせて大きく変化!JBの楽曲ではお馴染みのスリップビートがグルーヴィーに繰り広げられる。合間の軽~い「タッタカタッタカ」も爽やかである。このガタガタフィーリンのグルーヴを支えているのは、じつはボンゴであることがお分かりだろうか。よーく聞いてみると、この16分グルーヴはスネアのゴーストノートではなく、うすーく16分で演奏しているボンゴの寄与するところが非常に大きい。これが隠し味というものである。

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James Brownの楽曲は聴くべきものが非常におおいが、その中でも特に当ライブ盤「Live at the Apollo, Volume II」は、全てのミュージシャンが必ず聴かなければならない。楽曲構成、アンサンブル、テクニックも然ることながら、もはやエンターテインメントとはなにかを教えてくれる。イントロダクションの次の曲「Think」を聴けば、このライブに参加できなかったこと、この時代に生きられなかった自分の運命が悔やまれることであろう!