HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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上質な時間、Steely Dan - Aja の洗練

大人サウンドでお馴染みのSteely Danの楽曲を取り上げよう!最大の売り上げを記録しグラミー賞を授賞したアルバムAja(エイジャ)から、アルバムタイトル曲Ajaだ!! 

彩(エイジャ)

彩(エイジャ)

 

しかしこのアルバムジャケットの美しいこと。アルバムに収録されているサウンドが表現されているかのよう。日本人写真家が日本人モデルを撮った写真なのだそうだ。

 

さてアルバムタイトル曲Ajaでドラムをプレイするのは、生ける伝説Steve Gadd!!8分ほどある本曲のなかでドラマーとして注目せざるを得ないあの部分を見てみよう。

(4:32-)

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1~5小節目は、曲中何度か登場するパターンである。ハイハットペダルを左足で蹴って、スプラッシュ奏法で8分裏で鳴らしている。すこし変わったパターンであるが、シンバル+ハイハットオープンの広がりのあるサウンドが、Ajaの澄み渡るサウンドと非常にマッチしている。
1~5小節目で少しずつ盛り上がり、6小節目からは急にドラムが激しくなるお待ちかねの部分。そしてSteve Gaddといえば11、12小節目のこの伝説の6連符のフレーズである。手順はこの様になっている。

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13小節目もまた伝説的フレーズで、難易度はそれほどでもなさそうに見えるが、タイム感や勢いを失うと決まらないフレーズでもある。Steve Gaddのプレイ映像を見ると、手先・腕先で軽々とスマートにプレイしているのではなく、椅子から身体が浮くほど力いっぱい演奏している。ここはGaddに習って、怠けず身体全体を使って全力でプレイしよう。顔も休んではならない。顔だけで演奏しているつもりで、表情も全力で力ませてみよう!

 

次にその続きの部分。一旦落ち着いて、24小節目からまた激しさを取り戻す。

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27小節目は先程の6連符フレーズを連続させ、2つ目と3つ目の6連符のアタマだけスネアを抜いている。いや、というよりかは直前で右手でフロアタムを叩いているので抜かざるを得ないと言う方が正確か。手順は先ほどとほぼ同様にこんな感じだ。

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また28小節目もSteve Gaddがよく繰り出すもので、シンプルながら著しく迫力がある。こちらも顔も含めて全身で全力で当たっていこう!

 

次号では引き続きAjaの後半部分のアレを採譜してみようと思う。乞うご期待!!

Limp Bizkit - My Generation が好きな女子と付き合いたい

Do you think we can fly... ということで今回は説明不要のLimp Bizkit!!

アルバムChocolate Starfish and the Hot Dog Flavored Waterの楽曲My Generationのプレイを紹介だ!

チョコレート・スターフィッシュ・アンド・ザ・ホット・ドッグ・フレイヴァード・ウォーター

チョコレート・スターフィッシュ・アンド・ザ・ホット・ドッグ・フレイヴァード・ウォーター

 

 ちなみにChocolate Starfishってのは女性のアレで、Hot Dog Flavored Waterってのは男性から出るものを示している。個人的にとても残念なジャケットのイラストとあいまって何やら気味の悪いことになっている。しかし収録されている楽曲はとってもイイ感じなのでご安心ください。

My Generationの冒頭からのドラムのリズムパターンソロを採譜してみた。ハイハットは常にオープンでプレイしているが見づらくなるので楽譜上は省略している。

 

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小節あたまやそれに準ずるところは両手でシンバル類をブッ叩いている。両手でやっているところは楽譜上も2つシンバルを書いている。YoutubeにMy Generationの映像があるのでその様子を確認してほしい。音声を鑑賞する際には、なるべくYoutubeでなくCDやmp3などで正規のものを聞いていただきたい。かれらの楽曲全部に言えるが、歌詞のなかにファックとシットが多くてYoutube映像では検閲のため歌が途切れ、せっかくの勢いが殺されてしまっているからだ。

何気ないヘヴィーなドラムパターンのようにも思えるが、上記譜面で赤色にしている音符は少々問題がある。よくみると右足で16分音符を3連打しているのである。アレレ?やってみると意外と難しい!3連打と意識すると逆に引っかかるかもしれない。前の小節の16分裏(1打目)を、なんというか無かったことにして、次の小節の最初がたまたま2連打だった、みたいに考えてみるとスムーズにプレイできたりする。考え方の違いが成功失敗を左右するちょっと不思議なプレイである。

If only we could flyyyyy, Limp Bizkit style. John Otto, take 'em to the Matthew's bridge!! とMy Generationの冒頭の歌詞で呼びかけられているJohn OttoLimp Bizkitのドラマーである。歌が検閲で途切れてしまう程のバッドな奴らと見せかけて、確かな技術を持つまじめで優れたドラマーだろうな、とおもって今Wikipediaで調べてみたらやはり!ジャズドラムを勉強したとかブラジル音楽、アフロ・キューバン、ビバップやファンクなどいろんなジャンルに熟練しているとのことであった。テクニック的に難しくてキチンと練習しないといけないから、デスメタルとかそのあたりのプレイヤーはそんな経歴のプレイヤーが多いような気がする。

2時間で覚える Whiplash - Caravan 絶対攻略マニュアル

今回は映画音楽からチョイス!

ドラムが中心になっている映画はそれほど多くない。そんななか、3年か4年前ににわかに脚光を浴びた映画といえば、Whiplash(邦題:セッション)!!

もちろんわたくしも鑑賞しました。ドラマーが目を凝らして観ると少し気になるところがあるものの、何らか心が動かされるよい映画であった。いったん映画評論はせずに、その心を動かす音楽にフォーカスだ! 

セッション(字幕版)
 

あろうことか、ドラムが勝手に演奏を始めてしまう

ラストシーンで演奏されるのがCaravanで、このドラムプレイがたまらなくグルーヴィー!泥臭くなくスカッとするビッグバンドアレンジである。ちょっとしたことでスグに怒る指揮の人がMCで話している途中で、あろうことか、ドラムが勝手に演奏を始めてしまうという激アツのシーンがコチラ!!

颯爽とクールな演奏の背後に隠し持つ熱い感情!数あるCaravanのカバーの中でもベストなアレンジではないだろうか。カッコE~。楽譜にするとこんな感じだ!!!

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概ね1、2小節目のパターンが基本パターンとなっており、たまにタムがトコトコと入ったり、3連符真ん中に入ってビートを揺らすなど味付けしている。1、2小節目のパターンがあまりにオイシ過ぎて、味付けがなくともごはんがいっぱい食べられそうである(1、2小節目のパターンだけで十分にカッコいい、ということ)。

少し譜面が見づらいので1、2小節目のパターンのエッセンスだけを抜き出すと下図のようになる。右足のキックのパターンを正確に踏んで、2拍目の16分裏のスネアアクセントをビシッとグルーヴに乗せていきたい。

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ハイハットが異なる3つのパターン

またまた細かいことであるが、基本パターンが同じく繰り返されているように聞こえて、じつは左足のハイハットを踏むパターンが3つ登場する。曲イントロのように4分音符で踏んでいるところと、ジャズ風に4分音符裏で踏んでいるところ(図A)と、盛り上がり過ぎて8分音符全部踏んでいるところ(図B)がある。どれもトップシンバルのカップが強くリードする4ビートであることは変わらないが、その微妙なグルーヴの差異を確認してみると面白い。図Bのパターンが一番勢いを感じるね。

(図A)

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(図B)

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些細なことを気にし過ぎ!

なお、この動画の0:51あたりでフィルムが逆回しになっているのにお気づきだろうか。Youtubeのコメントで指摘しているすごい観察力の人がいた。なぜそうなっているのか謎である。また0:46では、ドラムの彼が指揮者に「Fxxx you!」といっているらしいのだがあまりピンとこなかった。さらに、0:21に一瞬だけベースが演奏している様子がうつってしまっているがストーリー上これはありえない。。。よく見つけるものだ。

そういえば、演奏の映像と鳴っている音とのズレが大きくて興ざめしてしまったギター弾きの恋という映画を思い出した。ギター運指が鳴っている音と違ったり、ジャンゴ・ラインハルトのスタイルが考慮されていなかったりで気になってストーリーが頭に入らなかったよ!我ながら些細なことを気にし過ぎ。Whiplashも、いちドラマーとしてはドラム演奏の映像と鳴っている音とのズレがやはり見えたが、映画全体に影響があるものではまったくなかった。まだ観てない人はオススメなのでぜひ観てね!