人間は Frank Zappa - Zomby Woof を扱うには早すぎたんだ
夏休みはいかがお過ごしでしょうか。夏休みでない方はいかがお過ごしだったでしょうか。わたくしは例えば鬼怒川温泉でゆったりたっぷりのんびりしておりました。
さて、夏休みとは無関係に、今回またまた要望がきわめて少ないFrank Zappaのお時間!Zappaの楽曲の特徴がとてもよくでているZomby Woofで今年の秋を占ってみよう!!
Frank Zappa - Zomby Woof
1973年リリースのアルバムOver-Nite Sensationで初回登場。その後、いくつかのライブ録音などが複数リリースされている。その中でも、1991年リリースのThe Best Band You Never Heard In Your Lifeのライブバージョンを確認する。これは変拍子のヘンさ加減が明確になっていて、またミュージシャンがそれに完全について行けているベストなバージョンであると思われる。なにしろ、The Best Band You Never Heard In Your Lifeである。もちろんZomby Woof以外の曲も最高品質。Led ZeppelinのStairway To Heavenのカバーが特にオススメである。
Best Band You Never Heard in Your Life
- アーティスト: Frank Zappa
- 出版社/メーカー: Zappa Records
- 発売日: 1995/05/30
- メディア: CD
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常軌を逸していると表現せざるを得ない
Zappaに参加するミュージシャンでさえついて行けなくなるほど難解な構成をもつこの曲は次のように始まる。ドラムパートを担うのはChad Wackermanだ。
(00:00-)
これはいけない。最初の5小節で拍子が5種類も登場するとは、すでに常軌を逸していると表現せざるを得ない。15/16も極めてトリッキーだ。9小節目でやっとのことで4/4に落ち着く。よかったよかった。採譜していて私も安堵したので、その気持ちを込めて4/4を緑色に塗ることにした。
4小節目、5連符5つは何やら複雑そうに見えるが、下記の通りRLRLLを繰り返しているので、左右の手順やタム移動に関する困難は無いと思われる。右手がタム等のドラムキット上を移動して行き、その間を左手でスネアを弱く叩いて埋めるような形。手順でなく、このテンポにおける5連符のスピード感をつかんで、正確に5連符のリズムを打ち出すことに神経を集中する必要がある。
いろいろな「5」が押し寄せる
そしてそのすぐあと11小節目から。
15小節目、4小節目と同じく5連符をRLRLLで進めるが、下記赤い音符のところだけ左手でスネアでなくタムを叩いていることが分かった。いや、またしても自分で書いておきながら、言っていることが細かすぎる。タムのタイミングはどうあれ、正確に5連符のリズムを打ち出せればよいだろう。
24小節目~34小節目は、また「5」が出てくるが、ここまでの5連符とは違うスピードであることがポイントである。4分音符を5つに分けるのでなく、16分音符が5つある。つまり、ここまでの5連符よりも少しだけスピードが遅い(音符間の間隔が長い)ものとなる。RLRLLでタムが上から下に移動し、次に逆にRLLRLでタムが下から上に戻ってくる感じになっているのが面白い。実際、ここのメロディーは29小節目の真ん中に鏡を置いたかのように反転しているので、絶対音感がある人に確認してみよう。
そして35小節目で再度に安心安全の4/4に戻り落ち着いた。そんな4/4には緑色がふさわしい。しかし4/4もつかの間、なんとその次の展開において新しい切り口の落ち着かない構成が出てきてしまうのであった。これについては近日、次号にて詳しく確認することとする。
パソコン買ったらまず最初に入れとくべき PPAP Drum Solo by 手数王kozo suganuma & hiroshi matsuo
PPAP Drum Solo by 手数王kozo suganuma & hiroshi matsuo
仕事の同僚が、とあるプロドラマーと知り合いであることがわかり驚いた。そして仕事の休憩中に、まさか手数王とフラジャイルと変拍子について雑談するとは思わなかった。意外とミュージシャンは身近にいるものだ。
雑談の折、ウケる映像があるとこちらを紹介してもらった。
手数王こと菅沼孝三氏がピコ太郎のPPAPにのせてドラムを演奏するというものである。ポップなPPAPにまったく似あわないヘヴィなテクニカルフュージョンドラム!そのギャップがポイントだ。
かわいらしく始まったと思えばいきなりコレ
最初の部分をすこしだけ採譜してみた。
最初の4,5小節目の6連符は、映像の通りスティック回しも魅せるプレイである。左手でスネア->ハイタム->ロータム->フロアタムと順番に移動しつつ、間に両足をいれて6連符。その間、遊んでいる右手ではスティックを回す。次は逆に右手でフロアタム->ロータム->ハイタム->スネアと順番に戻ってきつつ左手でスティック回し。手順は以下のようになる。
とっさにはできないのであらかじめ練習して準備しておくことが必要なプレイである。ピ・コ・タ・ロ・ウーーーーーーーーピコッ、などとかわいらしく始まったと思えばいきなりコレなのが大きなギャップだ。
顔でもドラムを演奏している
さらに全般的に、超高速テクニカルプレイと手数王の笑顔とのギャップがやはり著しい。この眩しい笑顔は手数王が他のドラマーと一線を画すところである。0:58あたりからの両足6連符連打の重厚メタルパターン中が最高にニッコニコ。両手両足の四点だけでなくさらに五点目として顔でも聴衆をエンターテインする手数王なのでした。映像を繰り返し見ていて触発されたので演奏中の笑顔の練習もがんばることに決めました!
人生がときめく Red Hot Chili Peppers - Blood Sugar Sex Magik の魔法
- Red Hot Chili Peppers - Blood Sugar Sex Magik
- Chad Smithのスキルの高さをうかがわせるプレイ
- 全ドラマーが目指すべき理想的なタンタカラドン
- 彼はプロフェッショナル
- デスブログ的な力がついに
Red Hot Chili Peppers - Blood Sugar Sex Magik
今回は大人気、Red Hot Chili Peppersの楽曲を再度チェック!前回のレッチリの記事と近しい約30年前のアルバムでまた古くて恐縮であるが、1991年リリースの問題作Blood Sugar Sex Magikからアルバム同タイトルの曲Blood Sugar Sex Magik!
前回のレッチリの記事はコチラ
Chad Smithのスキルの高さをうかがわせるプレイ
冒頭からのドラム基本パターンはこのような形になっている。
(0:00-)
テンポは73bpmくらいで、ゆったりヘヴィーなグルーヴがたいへん心地よい。一拍目の16分音符4つ目のハイハットオープンは、もしかしたら人によってはバランスがとりにくいかもしれないが、楽曲を特徴づける極めて重要なハイハットオープンなので外せないところである。非常に安定感があってChad Smithのスキルの高さをうかがわせるプレイである。
全ドラマーが目指すべき理想的なタンタカラドン
(1:06-)
安定感グルーヴが続いてまさにサビ直前、定番の「タンタカラドン」。(フラム付き)スネア+スネア+ハイタム+フロアタム+キックをこのように音符に乗せて「タンタカラドン」である。フィルがバッチリ過ぎて音符に赤色を付けてしまった。よくある形のフィルではあるものの、ゆったりグルーヴに身を任せて油断していたところ突如のタンタカラドンがかっこよい。タイム感がパーフェクトで全ドラマーが目指すべき理想的なタンタカラドンである。もう一つ後半のサビの前、2:23にもタンタカラドンがあり(正確にはタンタカラドンドン)、こちらも同じくパーフェクト。そういえば、レッチリって、〇ッチリっていう日本語に頻出のフレーズ(語感)だから親しみやすいのだろうか。バッチリ、カッチリ、キッチリ、てっちり、もっちり。それはどうでもよくて、タンタカラドンの次のサビのところのパターンはライドシンバルで刻み、ここまでのハイハットパターンとは異なり16分音符裏表にキックとスネアが入ってくる。どちらかと言えばChad Smithの得意なパターンはこちらであろうか。同じくゆったりテンポの中で走らずモタらずの安定感がすばらしい。
彼はプロフェッショナル
曲の最後のほうでちょっとすてきなフィルが。
(4:08-)
最高潮に盛り上がった結果、2小節目のポリリズム的なアクセントと32音符のフィルがちょっとすてきである。最高潮になって野生の本能を解放してもよさそうであるところ、焦らずテンポが維持されているのはやはりスキルフルである。おそらくには、楽曲をイイ感じにするために冷静に最高潮のフリをしているのではないだろうか。そう、彼は感情を自らの意思によりコントロールできるプロフェッショナルなのである。
デスブログ的な力がついに
余談であるが前回に軽い気持ちで有名人へのオマージュとして記事タイトルをつけたところ、その数日後にそのかたの入院の報道などがあり驚いた。かのデスブログ的な力がついに宿ったか。もちろんなんの恨みもないのだが、今回のタイトルでは片付けコンサルタントを狙い撃ち!