HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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もう Jeff "Tain" Watts: San Jose Jazz Fest で失敗しない!!

前回のWynton Marsalisの曲にてドラムを担当した彼に引き続き登場していただこう!彼の名はJeff "Tain" Watts!カタカナで書くとジェフ "テイン" ワッツとなり、この字面のパッと見の印象で真ん中の「テイン」を「ティン」と発音してしまうことも人によってはあるようなので注意だ!

前回の記事はコチラ 

Jeff "Tain" Watts: San Jose Jazz Fest

それではこちらのSan Jose Jazz Festでのプレイを確認してみたい。

最初は両手でカウベルを叩くラテン風グルーヴ。極めてゴキゲンである。これはなんとしてもマネしたい!と思い立ち、楽譜にしてみたところこうなった!

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初見した印象からしてみると、カウベルを16分音符ですべて埋めていないのは意外だった。しかしこの両手カウベルパターンだと、楽譜におこしても映像を見てもどうも手順がわかりにくい。

映像後半に大きなヒントが!

映像後半で、右手カウベルで左手スネアで同じ手順でプレイしてくれている。そのパターンでの左手をカウベル上に持ってくれば上記の最初のパターンができあがるはずだ。助かった!映像後半の手順がわかりやすい部分のパターンはコチラ。RL手順も載せてドン!

(3:01 など)

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それでもなお、楽譜では映像の見た目が盛り込めないのでちょっとピンと来ないかもしれない。映像で明確にわかる本パターンのポイントは、右手がカウベルとフロアタムを行き来していることだ。これは本映像のカウベルのパターンにおいて常に保持されているので、この右手パターンをベースとして左手で間を埋めるという発想でプレイすると彼の手癖により近づけるだろう。

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このヒントによって幸い手順が判明したので、一番最初のパターンにもどって手順を書くとこうなる。これでなんとかマネできそうである!

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ラテン風のクラーベ感をあきらめるか否か

また左足ハイハットに注目してみると、ちょっと変則的なので本パターンの難易度を跳ね上げてしまっている。グルーヴを形作る主要な要素ではないので実奏の際には省略してしまうという手もある。それでもやはり、ラテン風のクラーベ感(オスティナート感)を醸し出すために鳴っていて欲しいリズムではある。ラテン風のクラーベ感を醸し出せるからこそ、四肢のコーディネーションが比例して難しくなるので悩ましいところだ。

その他素敵パターン

その他にスネアのアクセント位置が異なるパターンも登場する。1拍目2つ目の16分音符と、4拍目にスネアでアクセントをつけているのが相違点である。左手はスネアの代わりにハイハットを時折かすめていたりもする。

(3:17 など)

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またライドシンバルとクローズドリムショットによるこんな素敵なパターンも。

(1:32 など)

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ドラムクローズアップ映像をたくさん見るとイイね

映像があると手順やセッティングが明らかになるのでいいね。音だけだと、セッティングがどうなっているか仮説を置いて、プレイしている様子を強くイメージしないと具体的な手順やフレーズの発想の理解が難しかったりするので。今回で言えば、カウベルとフロアタムがすごく近くて右手が常に行き来していることは音だけではわからなかっただろう。ドラムクローズアップの映像を若いころにもっとたくさん見れていたら、私はどれほど回り道を回避できたのか。ミュージシャンのプレイ映像に手軽にアクセスできるデジタルネイティブがうらやましい!このブログでなんども書いている心からの思いなのであった。

酒と泪と男と Wynton Marsalis - Autumn Leaves

今回は当ブログおそらく初となるジャズドラム!Wynton Marsalisの1987年リリースのアルバムMarsalis Standard Time, Vol.1からご紹介。ドラムを担当するのはJeff "Tain" Wattsだ。 

スタンダード・タイム Vol.1

スタンダード・タイム Vol.1

 

シンプルかつ強引に1から8まで一つずつ増えていっている

当アルバムから、スタンダード中のスタンダードAutumn Leavesを確認する。しかしテーマの構成のアレンジがまったくスタンダードではない。曲のアタマからドラムはこのような形だ!

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なお4ビートジャズを楽譜にする場合は一般的にはこの倍の書き方、つまり上記の1小節分を、テンポ2倍の2小節分として記載するものと思うが、ここではトリックを分かりやすくするためテンポ半分の書き方をした。swingの指定もあいまいになるので無しとした。

余りお目にかからない小節全体にかかる3連符、5連符、6連符、7連符、そのさらに内側に3連符が入ってくる。楽譜にして見てみると複雑なのだが、実際は見た目より単純な発想である。曲をいちど聴いてみればすぐにわかるはず。そう、シンプルかつ強引に1から8まで一つずつ増えていっているのである。ライドシンバル(およびベース)の主要なビートだけ書き出すとこのようになる。

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テーマの終わりで少しずつ減ってもとに戻る

ライドシンバル8回の高速4ビートでテーマの終わりまでくると、こんどは少しずつ減っていくようになっている。

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ライドシンバル(およびベース)の主要なビートだけ書き出すとこのようになる。

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8-6-4-3-2。ここでテーマのアタマに戻ってまた1-2-3-4-5-6-7-8。ありそうでなかった構成だ。思いついても実際にはやらないであろう構成をやってしまっているのは、スタンダード過ぎて飽きてしまったミュージシャンたちの貫禄のなせるわざ!

忍耐が要求されるドラム採譜

本曲のような特殊なことがあれば別であるが、ジャズのドラムって楽譜に起こしたりどうこうしたりし難いところがある。別ジャンルと比較して自由に演奏されることが多く、採譜が困難な上、そのようなインプロビゼーションを正確に書き起こしてもあまり意味をなさないからだ。それでもなお、20年以上も前だがドラムマガジンMiles DavisのアルバムFour & Moreの中の曲だったか、ジャズドラム一曲丸ごと完全な楽譜が掲載されていたのを思い出した。しかも自由奔放でお馴染みのTony Williamsのプレイ。採譜する労力を知るほどに、これがいかに忍耐が要求される仕事であったか想像に難くない。自分のようにワンオペでなければそうでもないのかな。当ブログは月刊とは言えそろそろワンオペがつらくなってきたぞ!

Frank Zappa - Zomby Woof たんにハァハァしてる人の数→

Frank Zappa - Zomby Woofの続き!

引き続きしつこくFrank ZappaのアルバムThe Best Band You Never Heard In Your LifeのバージョンのZomby Woof!ねつい [宮城県]!!

Zomby Woof

Zomby Woof

 

 前回の記事はコチラ!

5のグルーピングと無意味なメロディー

I am the zomby woof!!とロックでソウルフルなボーカルのセクションがまた熱くてカッコE。そのセクションが続いた後に再度変拍子に突入するところ。例により変拍子は赤字で記載。

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5、6小節目は5/4が2小節で、メロディーを聴けば明らかなように中身が5つの単位にグルーピングされている。5/16が8小節と書いても意味合いと長さは同じなので、本物の楽譜はそうなっているかもしれない。ここでドラムは16分音符5つでなく、ハイハットで細かく32分音符10個に分けている。アクセントの位置やハイハットの音のキレの良さを考慮すると手順はオルタネート(RLRLRLRL)だ。これはかなり速い。ドラマーChad Wackermanのテクニックが光る。もちろんほかの部分のテクニックも光っているのでこの部分に限らず!

9小節目からは不思議な、いや敢えて言おう、まったく無意味なメロディーをモチーフにした謎のセクション。9小節目のメロディーは、10小節目で音程の上下は同一でリズムだけ変えて繰り返されていることにお気づきだろうか。例によって絶対音感のある人に確認してみよう。非常に機械的な作曲方法である。

長めのギターソロ後のスーパーファンキーセクション!

上記の後、この時期のFrank Zappaの楽曲に頻出の長めのギターソロが始まる。作曲者でバンドマスターでありながら、Frank Zappaはだれよりもギターソロを弾くのが好きなのである。彼自身のギターソロにフォーカスした、そのものズバリGuitarという名前のアルバムを発表してしまうほど。しかも大盛2枚組。そんなギターソロが終結したあたりからこんな形。

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5小節目からが再度ボーカルが目立つセクション。ドラムとボーカルだけになってロックな歌が熱く際立っている。ここのドラムはバックビートが16分音符分だけ前にスリップするなどしており、これがボーカルと絡んで極めてファンキーなプレイとなっている。それでいて、すべての小節で16分音符スリップはさせておらず、一辺倒でないフレーズが咄嗟にでてくることに感銘をうける。変拍子ではないがここも本曲の聴きどころだ。このあと12小節目の途中からは3連符が入り6/8ロックバラード的なセクションになって、14小節目に急激にヘンなキメが入って、あっという間に15小節目てAメロに戻る。なんと唐突なことであろうか!

お気持ち表明

ここまで続いてきたZomby Woof連続シリーズ(全2回)で、問題となる箇所はすべて網羅した。読者諸君はすぐにでもプレイ可能となったことであろう。

Zomby Woofを確認するのを機会にZomby Woofがリリースされたあたりのアルバムを聴きなおすと、自分の思うZappaらしさが出ている曲がこの時期に多い。1973年~1975年あたり。Zomby Woofが入っているOver-Nite Sensationはもちろんのこと、その直後のApostropheRoxy & ElsewhereOne Size Fits Allに特に集中している。Zappa関連の記事は残念ながらあまり人気がないのだが、上記の濃厚なアルバム群から引き続きドラムプレイを取り上げて詳しく紹介したい気持ちをここに表明します。