HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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もう疲れた!という人に勇気を与える yujihb - 基礎編03 でありたい

今回はすこし違う趣きで。特定の楽曲ではなく一般的なフィルインの発想について紹介してみようかと思う。特にフィルインの中にキックを絡めたケースである。

16分音符のフィルインの中に一部キックをはさみ込むこと

こんなフィルインがロックドラムの教則本の基礎編にしばしば見られる。

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ドラムの練習のためのフィルインとして極めて典型的である。それ故に、もはや実際に楽曲の中で演奏されることは避けられるフレーズである。これをすこしだけ変えることで、楽曲のなかで十分に有効で印象的なフレーズとすることが可能である。この16分音符のフィルインの中に一部キックをはさみ込むことがその一つの方法だ。いわゆるリニアフレーズというやつだ。例えばつぎのようなフィルインが考えられる。

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上記の例は、3打に1打程度、定期的にキックをはさんだものである。[B]の例では最初の[A]の例のハイタム/ロータム/フロアタムに準ずる箇所がキックとなっており、音色的にはそれほど変わらない(スネアが最初に2打で、あとはスネア以外の低い音で埋まっている形)ように思えるかもしれないが、[A]のような典型的さ加減は大きく減少する。そしてなにより、演奏がラクなのである。ぜひやってみてほしい。両手が連続せず16分音符分だけひとつ休符があることによって、リストストロークではなく大きくアームストロークで演奏できる。したがってラクにタムの音量を出すこともできる。

[C]の例ではスネアの数が[A]や[B]とは異なるがおおむね似た形である。最後だけキックがダブルになるので、テンポによっては少し足がきついかもしれない。

[D]の例は2小節目最後のフロアタムが1打しかなく、すぐにつぎの小節のアタマのシンバルがあるので手順に注意しないといけない。フロアタムを左手とするのがスムーズと思われるが、左手で小節のアタマのシンバルいけちゃう系(?)の人であれば逆でもよいだろう。

それほど苦しまずにできるテクニカルフィルイン

キックをはさむことで少し余裕がでてきた両手。いつも忙しい両手に休んでもらってもよいが、こんなこともラクにできるはずだ!

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急激にテクニカル感がでてくる。急に激しすぎる感があるので使いどころは限られるかもしれないが、それほど苦しまずにできるテクニカルフィルインのひとつのアイデアである。一番最初の[A]の例を同じように32分音符に変更してみると、

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あーこれはイカン。これは疲れるやつだ。見ただけで吐いてしまいそうである。一方[B改][C改][D改]は、[A改]のような怒涛の連打でないにもかかわらず[A改]に準ずるスゴみを比較的ラクに実現できると考えられる。それもこれもフィルインにキックをはさみこむことによる恩恵である。

ということで、キックを絡めたリニアフレーズのアイデアをご紹介。教則本の基礎編には載っていないが、このようにメリットがたくさんあるので是非いちどお試しを!

 

The Isley Brothers - Fight the Power を聴けば、自信が生まれる

夏の終りに

昨日までがうそのように今日は涼しくなり、もうすでに夏は終わりのようである。時がものすごい早さで進んでいる感じがするのは、外に出ないことが多いためか、それとも加齢のためか。ジャネーの法則 - Wikipedia でもあるし、下記サイトにあるように狭い家の中にずっといるということも要因となるようだ。

大人はなぜ時間を短く感じる? :日本経済新聞

大人になると慣れ親しんだ刺激の少ない出来事ばかりのため、時間経過に注意を向ける回数が減り、その分時間の進行が速く感じられるという。

広い場所にいるほうが、狭い場所よりも時間が長く感じられるとの実験結果があるそうだ。

 

さてそんな加齢が進んだわたしから、いにしえの、といったら大げさか、非常にクラシックなソウルミュージックのご紹介!リリースされたの45年前(1975年)!The Isley BrothersFight the Power!!

Fight the Power, Pts. 1 & 2 [Explicit]

Fight the Power, Pts. 1 & 2 [Explicit]

  • 発売日: 2010/01/27
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

The Isley Brothers - Fight the Power

極めてシンプルなリフに合わせてダンスせざるを得ない!聴いたことがある人はもちろん、初めて聴いた人であっても自動的に身体が動くレベルのグルーヴ!ドラムのほうはこのような感じである。

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赤色にしている音符のところがそのリフに合わせている部分のひとつ。フレーズにきれいに合わせて「・・・ド|ドドタド|ド」。これをずっと繰り返すので、耳に身体に残っていく。直後のフィルイン「・チータッタカ」も時折軽快に。ダンサブルにする隠し味的要素としては、バックビート(2拍目と4拍目)のところで常にハンドクラップが入っているのは大きいと思われる。

また、各小節の2拍目のバックビートのところ、スネアのアクセントと同時にキックしていることにお気づきであろうか。ピンク色にしているキックの音符のところである。取るに足らなそうに思えて、この押し進むグルーヴを生み出すポイントのひとつとなっている。バックビートとキックが同時というのは通常やらないので、押し進むグルーヴのひとつのアイデアとして確認しておきたい。

Fight the power ライブバージョンも同じく

ここで、突然別のトラックとなるがFight the powerのライブバージョンを合わせて確認してみたい。 

Fight the Power (Live)

Fight the Power (Live)

  • 発売日: 2015/08/21
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

ドラムはこんな感じである。

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原曲と違ってテンポがすごく早く、かなりエキサイティングである。原曲のように横に身体をくねらせてダンスするのでなく、縦に乗ってその場で小ジャンプしていくグルーヴである。言葉で表現するのはやはり難しく、書いていてよくわからなくなってきた。

このバージョンでも同じくバックビートと同時のキックが入っている(ピンク色の音符のところ)。ライブでもこれが保持されている。このFight the powerという楽曲のグルーヴを生み出すのに必要なキックであることは間違いない。その他の楽器と重なったり録音状態がわるかったりで、ところによりそのキックの音はほとんど聞こえないのだが大きな問題ではない。ドラマーがグルーヴを押し進めようとするその気持ちが大事なのである!!スピリチュアル?ブラック企業?いいえ、気持ちがスティックコントロール、キックのコントロールに影響を与えるのだ。

あなたが Prince - The Work, pt. 1 を聴くことは、未来につながっています。

この度はまたあの名盤から!それはもちろんPrinceThe Rainbow Children!ほんとうにしつこい。しつこくなってしまうのは名盤過ぎるから。ストーリーを織りなす一つのセットとして、このアルバムを総合的に超えるものを近年聴いたことがない。バンドメンバーのB氏から、いまさらに本アルバムについて言及があって自分も再度聴き直したということもある。それよりもB氏、これリリースされたの2001年だぞ!いま2020年ですよ。万が一2020年に聴いている人は挙手のこと。 

レインボー・チルドレン(特典なし)

レインボー・チルドレン(特典なし)

  • アーティスト:プリンス
  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: CD
 

5年前に書いた記事でちょっと恥ずかしいが本アルバムの別の曲について書いた記事です。 

 

さて本アルバムの中で唯一シングルとなっていた曲"The Work, pt. 1"を確認してみたい。ドラマーは、惜しくも3年前に亡くしてしまった、JBことJohn Blackwell。僕の永遠のヒーローです!There are no goodbyes, wherever you are, you will always be in my heart!

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イントロドンでPrinceシャウトでaawwww! 3小節目から基本パターンが始まる。16分音符のSwingで演奏。ドラムももちろんのこと、他の楽器も相互に高めあうことで生まれる極上のグルーヴである。ドラムパターンは一見普通そうだが、4拍目のバックビートがクローズドリムショットとなっている。これにより、少しだけ気持ちを抑えた全力を出さない雰囲気が生まれる。明日から本気出す。じゃなかった、次のサビで本気出すので、ここでは少し抑制するというメリハリプレイである。6小節目の4拍目がシンプルに4分音符だけになっていたり、その直後7小節目のアタマにアクセントがないのが静かでたいへんよい(譜面上ピンクの音符)。

 

つぎにサビの部分。こんな感じでパターンが変わる!

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ここは先程のSwingでなくて16分音符はこのままストレートに演奏する。一つの曲の中のAメロとサビでSwingフィールが変化するというのは珍しい。上記譜面ではゴーストノート含めて正確に書いていてゴチャゴチャしているので、エッセンスを抜き出してみるとこうなる。

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これは普通じゃない。なんと2拍目と3拍目が3回繰り返されている!やはりJB、凡人とは発想がちがう。スネアアクセントの手順はRLだろうか、それともスネアアクセントの手順はLLで、右手はハイハット4分音符のみで大きくガイドしながら、空いているところにゴーストノートを左手でいれていく感じだろうか。自分がやるなら後者だが、どちらもあり得る。

 

中盤のソロ回しに入る直前におなじみフレーズが登場したので念の為採っておこう。

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こちらの2小節目の3、4拍目。得意ワザを無理矢理詰め込んだ感がある。だがそれがいい。「右手フロアタム+左手オープンハイハット」からの「右手スネア+左手オープンハイハット」そして「キック」の3打のフレーズである。からの、などといいながら、ゆっくりしている暇はなく、高速で右手を移動させるか、または高速でリストをひねる瞬発力が必要である。不思議な迫力があるフレーズなのでこれはぜひ頂いておこう。

そしてこの"The Work, pt. 1"の次の曲が実は本アルバム一番のハイライト。それでは、想像以上に凄いこの曲きいてくださいEverywhere

なお「右手フロアタム+左手オープンハイハット」からの「右手スネア+左手オープンハイハット」のフレーズはEverywhereにも登場するので探してみて!