HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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Michel Camilo - On Fire をオススメするこれだけの理由

軽快なモントゥーノが印象的なラテン系ピアニスト、Michel Camiloのライブ音源からご紹介。North Sea Jazz Festival 2002にトリオとして出演しているものである。ベースはAnthony Jackson、ドラムはこちらもラテン系、Horacio "El Negro" Hernandezだ。


On Fire Live - Michel Camilo - Anthony Jackson - Horacio (El Negro) Hernandez.avi

 

このライブ音源に限らず、かれのドラムプレイはとってもクレイジーなのである。いったい何が問題なのか?このライブで演奏された神曲「On Fire」の基本パターンをご覧いただこう。

(1:49~)

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右手左手は問題なさそうである。テンポが速いので右手が疲れそうだが何とかなりそうだ。一番の問題は、左足で踏んでいるジャムブロックである(譜面の▲)。

そもそも左足でハイハット以外を変則的に鳴らすという事自体があまり無いのもあるが、この2-3クラーベの変則パターンを"常に"安定的に踏みながら右手左手右足を動かすというのは非常に難しい。もしかしたら沢山練習して慣れれば基本パターンだけはいけるかもしれない。しかし、たいへんクレイジーなことに、高速ストロークを含む複雑なドラムソロ(5:52~)の間もこの2-3クラーベを常に安定的に踏んでいるのだ!凄すぎワロタ。これは本当に難しい。参りました。

Youtubeのコメント欄には、「一回押すと2-3クラーベを自動的に繰り返すスイッチがHoracio "El Negro" Hernandezに搭載されてるんじゃないか?!」などと誠にクダラナイ事を書いている人もある。なんでクダラナイのかって?そのスイッチは実際に搭載されているからである!

 

(1:49~)

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ちなみに曲中キメの部分について、どんな譜割りになっているのかなあと気になったところだけ聞き取ったものを上に貼っておきます。ドラムプレイがスゴイとかそうじゃないとかは関係ないのだけれど。繰り返し記号のところは、概ね最初のドラム基本パターンを演奏している部分を示す。実際には繰り返しじゃないのでご了承を。わかりにくい。

 

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VAI - Here & Now の人気に嫉妬

 いつだって彼は僕のヒーローさ!Steve Vaiは僕の師匠です。わたしが所持するエレキギターもちろん24フレット!だって、22フレットだと師匠のソロがマネできないんだもの!

さて、師匠が「VAI」という名称のバンドを組んでいたときのアルバム「Sex & Religion」をお届けだ。

Sex & Religion

Sex & Religion

 

 同アルバムの歌詞カードには、切腹するサムライと、そのサムライから魂が発せられるようなイラストが載っていたと記憶している。本作に参加する圧倒的なアートを具現化するミュージシャン達のイメージと相まって非常に意味深である。そんな深そうなアルバムから、意味ありげな題名の「Here & Now」をとりあげてみよう。

ドラマーはというと、これまた私のココロの師匠Terry Bozzio大先生だ!そう、お気づきの通り、どちらもZappa門下生。Frank Zappaフリークの私にとって、Zappa門下生は無条件でお気に入りになってしまうのだった。

 

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イントロはシンプルなギターフレーズから始まったと思った矢先、もう2小節目から高速アンサンブル。自分はギターはできないが、ドラムだけは何とかなりそうだ。

つづいて譜面5小節目からパワーコードなリフと共にパワーのあるリズムパターンである。問題は7小節目の2、3拍目。片足だとたぶんできないので、ツインペダルかツーバスで臨んでみよう。キックがドコドコドコドコ!ベースがバチバチバチバチヘヴィメタルなキメがすこぶる快活だ。バンドが一体となって重厚さが醸しだされる。このような、一部ツーバスで処理するドラムパターンってのは知的だ。ずっと踏み続けているパターンと比較すると知的だ。さすがである。

当時未成年だったわたしはこのパターンを何度も練習していたのだが、どうもカッチリと決まらなくて悩んだものである。そんな事を今思い出した。いま現在カッチリできるようになっているのかどうか、こんどやってみよう。

 

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学研ひみつシリーズ『Incognito - Hold On To Me のひみつ』

ビニース・ザ・サーフェイス

ビニース・ザ・サーフェイス

 

 

前回から引き続き、かつてとても流行っていたシャレオツなアシッド・ジャズの代名詞的バンド、Incognitoのアルバム「Beneath The Surface」から「Hold On To Me」をおおくりしようじゃないか。

前回の記事はこちら。


今回はおまちかねそのドラムソロ部分をご紹介だ。

ドラムソロの前、2:34あたりで、ベースが爽やかなサンバ・ラテン風のノリに切り替わる。ソウルフルなAメロやBメロやサビとは少し風味が異なり、大きな曲の転換を予想させるパートである。

 

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そんな爽やかな気持ちも束の間(7小節しかない)、上記の様な掴みでドラムソロに突入!

 

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それは8小節のちいさな旅、しかし本曲の重要な要素であるドラムソロ。冒頭のベースのパターンが2小節ごとに置かれていて、2小節でひとつの単位となっている。

印象的な点としてあげられるのは、3小節目後半のポリリズムからの6連符への流れだ。タム、スネア、バスドラの3つだけでつむぎだされるストーリー。人が生まれ、生き、そして死ぬ。1小節とちょっとでそんな物語を聞いた気になる。

続いて5、6小節目は、つづけざまにタチーチー。乱れ鳴るタチーチーで変化を付ける。そしてドラムソロ終わりを告げるにふさわしい、バスドラのダブルを含んだスリリングな6連符パターンが連続で繰り出される。

 

飽きさせない!飽きさせないのだ!4つの単位(1単位=2小節)が互いに個性的で、彩りがある。このくらいのテンポでドラムソロ8小節って、いざ何も考えずにやってみると飽きるのだ。飽きさせるのだ。変化をつけようと意識していかないと聴衆が興味を失う傾向がある。しかし、Richard Bailey先生(本作のドラマー)はもしかしたら、一発何も考えずにレコーディングにトライしている可能性がある。音楽を奏でる者としての経験と勘が働いて自然に飽きさせない構成になったんじゃないかと推察する。

もう一つのポイントは、お気付きの通り8分で常に踏み鳴らしているハイハットだ。地 味に思えるかもしれないが、これにより6連符のフレーズを連続してもグルーヴを失わないという大きな効果がある。これがデカい。一方でこのソロでやってい るような組み合わせで演奏するのはテクニック的にかなりむずかしい。4小節目の6連符と、7、8小節目の6連符で動きが違うのだが、どちらもピッタリとオンタイムにまとまっているのは高度なテクニックである。褒めちぎる。ただ、3、4小節目のポリリズムのところだけはRichard先生ヤバいと思ったのかハイハットを踏むのをやめている。この一瞬の判断力も先生のスゴイところだ。やはり褒める。

 

楽曲のハイライトに与えられた8小節、音程のあまりないドラムでストーリーを奏でることができるか?ドラマー、いやミュージシャンの真価が問われる8小節だ。

 

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