HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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井上陽水 - 夕立 であなたの人生が変わったらすみません。

井上陽水 - 夕立

昔聴いていた楽曲をひたすら聴き続ける生活を続けていたところ、前回と同様に挙げておかなければならないものを再発見!なんと今回は井上陽水だ!!

シングル・コレクション

シングル・コレクション

  • アーティスト:井上陽水
  • 発売日: 1996/09/01
  • メディア: CD
 

井上陽水がなぜこのブログに?フォークとか素敵ハーモニーの歌謡曲ですよね?いいえ、極めて良質なファンクロックグルーヴに乗せて歌も激アツです。それはYOSUI SINGLE COLLECTION他に収録されているこの曲夕立

ファンキーからの3拍子からの激熱

最初から歌の一番の終わりあたりまで!

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ギターリフとリズムギターが織りなすファンキーなイントロである。これは何風といえば正しいのか、いろいろな表現がありそうである。譜面上「A」のところからドラムの基本パターンが始まって「B」から歌が入ってくる。15小節目では12/8(または6/8が2つ)がはさまっている。この急な3拍子が効果的であり、楽曲の大きな特徴となっている。その直後の16小節目アタマの「る、う、うッ」がシンプルにアツい!

ドラムの他に、ロートタムかなにかのサステインのない音が重なっている。夕立の雨粒がトタン屋根に当たって鳴る音のように聞こえて、夕立の緊迫感や臨場感を増している。このタム的な音によりドラムセットのスネアの音が判別し難いところもある。その一方で、キックは譜面のように16分音符系でたくさん動いていることがわかった。普通に聴いても分からなかったのだが、イコライザー0kHz(最重低音)~80kHzくらいの音程の音量レベルを上げたところハッキリ聴き取ることができた。15小節目でこんなにたくさんキックしているとは知らなかった。

歌ものにあるまじき拍子がはさまっている

歌の二番が入ってくる「C」あたりからの続き:

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24小節目に同じく3拍子がはさまって「る、う、うッ!」とキメたそのあとである。「D」からスネア頭打ちになって、もはや文字で表現できない歌詞を陽水はついに叫びはじめる。そして次の瞬間に3/8!ゆーうだっちだ、あ、あッ!!なんと歌ものにあるまじき拍子3/8がはさまっているのである。それでいて、この曲にはこれ以外にはない、と思わせる自然さで。これはすごい。だれがかんがえたんだろう。また、30小節目3、4拍目のハイハットをからめた「タカドチ!タドチ!」も小技が効いていて素敵な真似したいフレーズである。

チートレベルのいい声

親が聴いていたとか、マニアな友達がいたとか、きっかけがなければ井上陽水のヒット曲以外の曲はほとんど知られていないのではないか。自分はたまたま友達がYOSUI SINGLE COLLECTIONをよく聴いていてオススメされ、歌ものとして好きになったというのがきっかけでありドラムやグルーヴというキーワードで聴いたわけではない井上陽水についてかつて取り沙汰されたのは、不思議な歌詞だったりトークで垣間見えるキャラクターだったりしたが、自分はそのいい声に特に惹きつけられた。いい声過ぎてもはやチートである。ズルい。いい声で人々を惹きつけてみたい。

SNAIL RAMP - STEP BY STEP に出会っていなかったらと思うと、ぞっとします。

 

緊急事態宣言にまで状況が悪化して仕事場も閉鎖。インドアが板について、ひたすらに音楽を聞いている時間が著しく増える今日このごろ。片っぱしから曲を聴いて、懐かしの楽曲に数年ぶりに出会う、ということを繰り返している。

SNAIL RAMP - STEP BY STEP

今回はなんと、そんな中で一番あーこれ聴いてたわーと感慨深かったSNAIL RAMP!!懐かしのスカコアである。SNAIL RAMPのアルバムFLATFISH COMES!から、かれこれ20年以上も前なのに色あせないプレイを確認!

FLATFISH COMES!

FLATFISH COMES!

  • アーティスト:SNAIL RAMP
  • 発売日: 1997/09/21
  • メディア: CD
 

むしろここはそんなに難しくないんだけど

モンクアザラシかな?アルバム一曲目のSTEP BY STEPのイントロがコチラ!

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ドラムのISHIMARUさんは兎に角ウマい。ウマすぎる。SNAIL RAMPが他のバンドを一線を画しているのは彼のプレイが大きく寄与しているのではないか。SNAIL RAMPのすべての曲において最高でジャストミートなプレイなので、どの曲も詳しく確認したくなる。が今回は、私が20年以上前に参加していたパンクバンドにてカバーしたことがあったので一つの例としてSTEP BY STEPを選んでみた。

当時そのバンドで本曲をライブで演奏したあとに、あるオーディエンスからこの最初のタカジャーーーーーン、タカジャーーーーーンの動きが速くてスゴイ。俺にはできない!などと言われたのを思い出した。むしろここはそんなに難しくないんだけど、なぜだか気を引くフレーズらしい。

統制のとれた爆速パターン

中盤でギターソロが始まるところ!

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6小節目からパンクドラムではよくある形のパターンとなるが、そのタイム感、ダイナミクス、16分裏のキック等々がパーフェクトに統合しているので、ワンランク、ツーランク上のプレイである。テンポ約200BPMの爆速でこの統制のとれたプレイ。最高っス先輩。

オススメの神曲

ドラムにフォーカスするため本曲を取り上げたが、総体的に楽曲として好きなものは他の曲だったりする。例えば本アルバムの2曲目BREAKAWAY神曲。カバー選曲、ピアノの参加、荒削りさ等々、すべての必然とすべての偶然が功を奏する奇跡である。その他には、捨て曲が存在しないでおなじみのアルバムMR.GOOD MORNINGに収録の曲A WOMAN WITH A STORYSTILLも神。パンク×ピアノとかパンク×ストリングスみたいな組み合わせが単に自分が好きなだけかもしれないが、SNAIL RAMPのなにがそんなに一線を画するのかわかると思うので聴いたことない人はぜひ!

MR.GOOD MORNING

MR.GOOD MORNING

  • アーティスト:SNAIL RAMP
  • 発売日: 1998/08/08
  • メディア: CD
 

 

1年後に差がつく Frank Zappa - Andy

米が買い占められる昨今

マスクやティッシュペーパーの買い占めが問題となっている昨今、ついに近所のスーパーでは米が買い占められる事態に!自身のバンドのちょい出演だけでなく、今年一番ビッグなマイルストーンとなる予定であったワンマンライブも敢えなくキャンセル。期せずして文字通り幻のワンマンライブとなってしまった。バンドで密集もできず濃厚接触もできないこんな世の中じゃ、オンラインで記事を投稿する他ない!

 

さて前回のつづきで、Frank ZappaのアルバムThe Best Band You Never Heard in Your Lifeから、Andyの興味深い部分をひきつづき確認!

Best Band You Never Heard in Your Life

Best Band You Never Heard in Your Life

  • アーティスト:Zappa, Frank
  • 発売日: 1995/05/30
  • メディア: CD
 

前回の記事はコチラ

これでもう一曲作れんでしょ!

曲の序盤がひと段落して冒頭のテーマに戻った次の展開。

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1~4小節目までは、本曲冒頭から登場しているテーマの部分。その次の5小節目から突然最高峰にゴキゲンなセクション。こんなところに8小節だけ挿入しないで、これでもう一曲作れんでしょ!といった感想を抱かざるを得ない超絶グルーヴ。その要素は次の3つ:

  1. キメのフレーズが明確で、ドラムやホーン等々が綺麗にアンサンブルしていること。上の楽譜のピンク色の音符がキメの部分に該当する。
  2. ピアノと、特にベースの活発な16分音符の動き。楽譜にできないので聴いてもらうしかないのだが、グルーヴを一つ高みに押し上げている。
  3. そして中でも最重要なのがなんとタンバリン!影の立役者、いや、もはやこの犯罪的グルーヴを作ってしまった黒幕。なんてことはない裏拍打ちであるが、要素1と2と絶妙に調和し極めて効果的である。感極まって蛇足と知りながら楽譜に起こす!

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逆に安心、変拍子定期

最初に貼った楽譜の一部だが、記事がだいぶ下へ来てしまったので、13小節目から再掲。

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別の曲がつくれそうな8小節の直後は21/16のセクション。いつものZappaが出てきて逆に安心、変拍子定期。本曲で複数回登場するモチーフの一つである。まえの小節の最後の8分音符分から開始して、5つで区切ったような感じになっている。変拍子小節のアタマから変なものが開始するのではないのでとても合わせにくそうだ。ライブでここまで完全に合わせられるのは、まさにこのThe best bandだけであろう。

ミュージシャン殺しの緊張感のあるセクション

本曲冒頭のテーマの部分に似ているが、ちょっと異なる緊張感のあるセクションがその後に登場してくる。いつものことながら曲の構成が目まぐるしい。

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フレーズが冒頭のテーマと似ているということと、その半端な小節数とがミュージシャン殺しのセクションである。1小節目、このセクションに入ったことをしっかり覚えていたのはドラムのChad Wackermanだけ。さすが。ほかの人は残念、覚えてなかったので音を出せませんでした。9小節目の3拍目もおしい、ドラムだけ正解。そして13小節目に冒頭のテーマと同じものに戻る。12~13小節目ではきっとChad Wackermanが「次だぞ、次。また間違えんなよ!?」とばかりにメンバーをニラんでいた、もとい、ガイドとなるべくアイコンタクトをとっていたに違いない。13小節目の4拍目のシンバルのアクセントの強さに、バンドメンバーの緊張からの解放と安堵が聞こえてくるようだ

 

3月下旬にあって今日は雪まで降って、感染症の恐れもあって近日は完全にインドアである。The best bandに少しでも近づくべく、早く外に出てスタジオに入り、ライブで演奏するなど、精力的に活動したいものである。