HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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パソコン買ったらまず最初に入れとくべき PPAP Drum Solo by 手数王kozo suganuma & hiroshi matsuo

PPAP Drum Solo by 手数王kozo suganuma & hiroshi matsuo

仕事の同僚が、とあるプロドラマーと知り合いであることがわかり驚いた。そして仕事の休憩中に、まさか手数王とフラジャイルと変拍子について雑談するとは思わなかった。意外とミュージシャンは身近にいるものだ。

雑談の折、ウケる映像があるとこちらを紹介してもらった。

手数王こと菅沼孝三氏がピコ太郎のPPAPにのせてドラムを演奏するというものである。ポップなPPAPまったく似あわないヘヴィなテクニカルフュージョンドラム!そのギャップがポイントだ。

かわいらしく始まったと思えばいきなりコレ

最初の部分をすこしだけ採譜してみた。

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最初の4,5小節目の6連符は、映像の通りスティック回しも魅せるプレイである。左手でスネア->ハイタム->ロータム->フロアタムと順番に移動しつつ、間に両足をいれて6連符。その間、遊んでいる右手ではスティックを回す。次は逆に右手でフロアタム->ロータム->ハイタム->スネアと順番に戻ってきつつ左手でスティック回し。手順は以下のようになる。

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とっさにはできないのであらかじめ練習して準備しておくことが必要なプレイである。ピ・コ・タ・ロ・ウーーーーーーーーピコッ、などとかわいらしく始まったと思えばいきなりコレなのが大きなギャップだ。

顔でもドラムを演奏している

さらに全般的に、超高速テクニカルプレイと手数王の笑顔とのギャップがやはり著しい。この眩しい笑顔は手数王が他のドラマーと一線を画すところである。0:58あたりからの両足6連符連打の重厚メタルパターン中が最高にニッコニコ。両手両足の四点だけでなくさらに五点目として顔でも聴衆をエンターテインする手数王なのでした。映像を繰り返し見ていて触発されたので演奏中の笑顔の練習もがんばることに決めました!

人生がときめく Red Hot Chili Peppers - Blood Sugar Sex Magik の魔法

 

Red Hot Chili Peppers - Blood Sugar Sex Magik

今回は大人気、Red Hot Chili Peppersの楽曲を再度チェック!前回のレッチリの記事と近しい約30年前のアルバムでまた古くて恐縮であるが、1991年リリースの問題作Blood Sugar Sex Magikからアルバム同タイトルの曲Blood Sugar Sex Magik! 

前回のレッチリの記事はコチラ 

 

Chad Smithのスキルの高さをうかがわせるプレイ

冒頭からのドラム基本パターンはこのような形になっている。

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テンポは73bpmくらいで、ゆったりヘヴィーなグルーヴがたいへん心地よい。一拍目の16分音符4つ目のハイハットオープンは、もしかしたら人によってはバランスがとりにくいかもしれないが、楽曲を特徴づける極めて重要なハイハットオープンなので外せないところである。非常に安定感があってChad Smithのスキルの高さをうかがわせるプレイである。

全ドラマーが目指すべき理想的なタンタカラドン

(1:06-)

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安定感グルーヴが続いてまさにサビ直前、定番の「タンタカラドン」。(フラム付き)スネア+スネア+ハイタム+フロアタム+キックをこのように音符に乗せて「タンタカラドン」である。フィルがバッチリ過ぎて音符に赤色を付けてしまった。よくある形のフィルではあるものの、ゆったりグルーヴに身を任せて油断していたところ突如のタンタカラドンがかっこよい。タイム感がパーフェクトで全ドラマーが目指すべき理想的なタンタカラドンである。もう一つ後半のサビの前、2:23にもタンタカラドンがあり(正確にはタンタカラドンドン)、こちらも同じくパーフェクト。そういえば、レッチリって、〇ッチリっていう日本語に頻出のフレーズ(語感)だから親しみやすいのだろうか。バッチリ、カッチリ、キッチリ、てっちり、もっちり。それはどうでもよくて、タンタカラドンの次のサビのところのパターンはライドシンバルで刻み、ここまでのハイハットパターンとは異なり16分音符裏表にキックとスネアが入ってくる。どちらかと言えばChad Smithの得意なパターンはこちらであろうか。同じくゆったりテンポの中で走らずモタらずの安定感がすばらしい。

彼はプロフェッショナル

曲の最後のほうでちょっとすてきなフィルが。

(4:08-)

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最高潮に盛り上がった結果、2小節目のポリリズム的なアクセントと32音符のフィルがちょっとすてきである。最高潮になって野生の本能を解放してもよさそうであるところ、焦らずテンポが維持されているのはやはりスキルフルである。おそらくには、楽曲をイイ感じにするために冷静に最高潮のフリをしているのではないだろうか。そう、彼は感情を自らの意思によりコントロールできるプロフェッショナルなのである。

デスブログ的な力がついに

余談であるが前回に軽い気持ちで有名人へのオマージュとして記事タイトルをつけたところ、その数日後にそのかたの入院の報道などがあり驚いた。かのデスブログ的な力がついに宿ったか。もちろんなんの恨みもないのだが、今回のタイトルでは片付けコンサルタントを狙い撃ち!

YOU!レゲエ しちゃいなYO!

 

暖かくなりもうすぐ夏。夏といえば無論レゲエ。ということでいくつかのレゲエサウンドにおけるドラミングコンセプトをチェックだ! 

レジェンド<30周年記念盤>(Blu-ray Audio付)

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Reggaeはジャマイカで多様な音楽の影響を受けて成立したポピュラー音楽で、2018年にはユネスコ無形文化遺産に登録されたそうである。Wikipediaに詳しくドラムに関する記載があったのでそれに沿って確認しよう。 

レゲエ - Wikipedia

レゲエにおけるドラムビートは、「ワンドロップ (One Drop)」、「ロッカーズ (Rockers)」、「ステッパーズ (Steppers)」などに分類することができる。

とある。3つ挙げているそばから4つの項目があるのが釈然としないもののWikipediaをみるまで知らなかったことばかりであったので勉強になった。念のため英語版のWikipedia Reggae - Wikipedia と比較すると、英語版にはない「フライング・シンバル」の説明が日本語版には記載されていたり、矛盾するような記載があったので対比して引用することにした。

ワンドロップ

1拍目にアクセントがなく、3拍目のみがスネアドラムのリムショットバスドラムによって強調される[20]。カールトン・バレットが開発したとされるこのリズムは[注釈 3][20]、レゲエを特徴づける要素の一つである[20]。代表的楽曲はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの「ワン・ドロップ (One Drop)」など。

With the One drop, the emphasis is entirely on the backbeat (usually on the snare, or as a rim shot combined with bass drum). Beat one is empty except for a closed high hat commonly used, which is unusual in popular music. There is some controversy about whether reggae should be counted so that this beat falls on two and four, or whether it should be counted twice as fast, so it falls on three. An example played by Barrett can be heard in the Bob Marley and the Wailers song "One Drop". Barrett often used an unusual triplet cross-rhythm on the hi-hat, which can be heard on many recordings by Bob Marley and the Wailers, such as "Running Away" on the Kaya album.

レゲエ風にドラムを演奏するとなればまずはこれになるだろうか。Bob Marley and the Wailersの楽曲"One Drop"のワンドロップパターンはこのような形だ。

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一方で、どのレゲエの楽曲にもちょっとしたパーカッションが入っており、空間的な広がり、賑やかさ、ガヤガヤ感を醸し出す重要な要素となっている。そのためパーカッションなしで本格的なBob Marley and the Wailers的な雰囲気を出すことはできないのではないかと思っている。まずはパーカッション人口が少なくて手軽に導入できず、そこで一つハードルが上がることになる。

フライング・シンバル

ワンドロップのドラムに、通常はギターやキーボードが強調する2拍目、4拍目をハイハットのオープンショットによって強調する奏法[21]。1974年にカールトン・サンタ・デイヴィス (en) が開発し、1975年まで流行した[21]。代表曲はジョニー・クラーク (en)「ムーブ・アウト・オブ・バビロン (Move Out of Babylon)」など[21]。

こちら英語版Wikipediaにはないが、日本語版に記載の通りワンドロップの2拍目、4拍目がオープンハイハットになっているパターンである。代表曲Johnny Clarkeの"Move Out of Babylon"を聴くとその通りであった。

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なお、レゲエでなくてハワイアンと言われたほうがふさわしいくらいこの曲は南国である。柔らかなボーカルとその軽やかなビブラートは必聴である。

 ロッカーズ

ルーディメンツを下敷きにしたマーチングバンド風のフレーズをスネアドラムで叩く。その戦闘的にも聞こえるビートから「ミリタント・ビート」とも呼ばれている[22]。スライ・ダンバーによって開発された[22]。代表的楽曲はマイティ・ダイアモンズ「アイ・ニード・ア・ルーフ (I Need A Roof)」(1976年)など。

An emphasis on the backbeat is found in all reggae drumbeats, but with the Rockers beat, the emphasis is on all four beats of the bar (usually on bass drum). This beat was pioneered by Sly and Robbie, who later helped create the "Rub-a-Dub" sound that greatly influenced dancehall. Sly has stated he was influenced to create this style by listening to American drummer Earl Young as well as other disco and R&B drummers in the early to mid-1970s, as stated in the book "Wailing Blues". The prototypical example of the style is found in Sly Dunbar's drumming on "Right Time" by the Mighty Diamonds. The Rockers beat is not always straightforward, and various syncopations are often included. An example of this is the Black Uhuru song "Sponji Reggae".

日本語版と英語版の説明と大きく違うのでちょっと混乱。とりあえずいろいろな捉え方があるのだと理解してみることにしよう。日本語版に記載の「ミリタント・ビート」に該当するような例は発見することができなかったが、Mighty Diamondsの"I Need A Roof"と"Right Time" は英語版の説明に近く理解できた。ロッカーズとは、典型的なロックドラムのようにハイハットで4分音符にアクセントをつけているパターンのようである。Mighty Diamondsの"Right Time"のパターンはこのような感じである。

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ステッパーズ

スライ・ダンバーが開発した4拍子の4拍すべてに固い4つ打ちのバスドラムを打つリズムである[23][24]。代表的楽曲はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ「エクソダス」など。この曲でカールトン・バレットは、4分の4拍子を刻む4つ打ちのバスドラムに8分の6拍子を刻むハイハットの3連打を絡めている。

In Steppers, the bass drum plays every quarter beat of the bar, giving the beat an insistent drive. An example is "Exodus" by Bob Marley and the Wailers. Another common name for the Steppers beat is the "four on the floor". Burning Spear's 1975 song "Red, Gold, and Green" (with Leroy Wallace on drums) is one of the earliest examples. The Steppers beat was adopted (at a much higher tempo) by some 2 Tone ska revival bands of the late 1970s and early 1980s.

これもレゲエ風を強く打ち出せるパターンと思われる。バスドラム4つ打ちの上に、ハイハットを特定のタイミングでポリリズミックに打つことによりそれっぽくなる。なお、一つ目のワンドロップのパターンにおいてもこのハイハットが入ることもあり(Bob Marley and the Wailersの"Running Away" など)、ステッパーズだけの特徴というわけではなさそうだ。Bob Marley and the Wailersの"Exodus"は以下のようにステッパーズしている。

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レゲエ風ドラミングのヒント

また英語版にはレゲエ風ドラミングのヒントがいくつか書いてあったのでこちらも参考になる。

フィルインではクライマックスになってもシンバルをたたかない

バスドラムの中にたくさんものを詰め込んで、深くドスンとパンチのあるタイトな音にする

ライドシンバルは使わない。ハイハットでタイムキープする。アクセントにはディケイの早い(音が早く鳴りやむ)薄いクラッシュシンバルを使う

ということで今回Wikipediaの記載の整合性がとても気になってしまって精査し始めてしまった。兎も角、このようないくつかの分類を知っておくと、より幅広いスタイルで演奏ができるであろう。レゲエ風にしてみよう、からの即ワンドロップ、とは別のアプローチが今後はとれそうである。