テイルズ・オブ・ Tower of Power - Oakland Stroke...
前回の記事、Jeff BeckのScatterbrainにてパラディドルに異常なほどこだわりを見せたところで、ソリッドなパラディドルでお馴染みの彼を紹介しようじゃないか!
特筆すべきプレイヤーとして挙げられることが非常に多い、Tower of PowerのドラマーDavid Garibaldiだ!
彼を一躍有名にしたのはもちろんアルバム「Back To Oakland」の1曲目「Oakland Stroke...」(曲名の後ろのピリオド3コを忘れずに!)。また、同アルバムの11曲目の「Oakland Stroke」も同じ曲だ!
当アルバムは、雑誌Modern Drummer Magazineの投票で「ドラマーが聴くべき最も重要なレコーディング」の一つとして選ばれたこともあるらしいぞ!
楽曲のジャンル、バンドの分類というものは本当にさまざまであるが、Tower of Powerのジャンルをオークランドファンクと呼ぶ人もいる。ただのファンクとは呼ばずにそう呼ぶ原因、その微妙な差異を生み出しているのはDavid Garibaldiのプレイではないだろうか。そんな違いの分かるあなたにお送りする本曲のプレイがコチラ。
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冒頭はスネアだけの軽めのフィルインでサラサラと。続いてのドラムパターンがご注目。これはただの手癖やノリ一発のパターンではない。彼がいろいろとアタマをひねって、ホーンのリフのアクセントにスネアのアクセントが来るように、パラディドルを組み合わせメカニカルにパターンを作ったのである(と本人が言っていたと記憶している)。そのため、パッと見、パッと聴きでなんとなくプレイできるようにはできていない。楽譜に書いて流れを理解した上でプレイしなければならない。
本曲は曲の構成やキメが少しランダムなように聞こえて、みんなで適当にやってるんじゃないかという印象がある。ドラムパターンの1小節目4拍目と2小節目1拍目のオープンハイハットと、「プワップワッ」ってなギターのスライドプレイとでタイミングを合わせているのが少し目立つ一方で、ギターと同じ「プワップワッ」てのを別のタイミングでオルガンでもプレイしているので非常に紛らわしい。ドラムを採譜するのに時間がかかったじゃ無いか!しかし、何度か聞いてみるとランダムではなく、決まった位置でプレイされており、ドラムも決まったパターンを決まった構成でプレイしていることがわかる。
直後の流れがコチラ。
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決まった4小節のドラムパターンを繰り返し、4小節に一回ドラムフィルインが入るという固定された形となっている中、譜面の赤字の音符のところ、ここだけを一部スネアに変化させている。あー細かい!芸が細かい。そうこうするうちに、わずか52秒の本曲はフェードアウトして行くのであった。こんなに短い曲なのに長らく話題に上がり語り継がれるというというのは驚くべきことである。
先日Tower of Powerのライブにいったバンドメンバーによると、現在もDavid Garibaldiのソリッドなテクニックは衰えておらず、メチャメチャ凄腕だったとのことであった。調べてみるとなんと現在70歳!
ドラムって、いくつになっても続けられるのだなあ、体力が多少衰えたとしても聴く人を魅了する事ができるのだなあなどと思い、やがて老いていくわたしは少し安心した次第である!
面接官「特技は Jeff Beck - Scatterbrain とありますが?」
今回はJeff Beckの1975年リリースのアルバム「Blow by Blow」(発表当時の邦題は「ギター殺人者の凱旋」だったらしい)から、アノ楽曲をくわしく確認だ!
ドラマーはもちろん本ブログで何度か取り上げた、巨匠Richard Baileyだ!
巨匠のプレイを解説した記事はコチラや
コチラを参照ください。
当アルバムでは、荒削りながら最も勢いのあるRichard Baileyのプレイを聞くことができる。若くしてすでに巨匠の貫禄。アルバムのなかでも、ドラムプレイが気になる曲といえばそう「Scatterbrain」。9/8という少し変わった拍子で聴く者を魅了しているのがコチラのプレイである。
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冒頭はテンポ無し(Tempo rubato)でドラムソロ。テンポ無しでやってるなーと思っていると、いつの間にやら3小節目からIn Tempoで9/8が始動する。3小節目後半はちょっとグダグダになりつつも、4小節目からは本曲の基本パターンが登場している。7小節目からは、運指練習のような怪しいギターのメロディが始まり、ドラムはこのパターンの繰り返しとなる。
この基本パターンを聞いてみると、ハイハットオープンのアクセントが16分裏にあったり、小節の一番最後にはゴーストノート的な3連符がパララと置いてあったりで、まずはこう思うのではないか。パラディドル(右左右右左右左左等、ダブルストロークをいれた手順)を駆使して、さぞかしパラディドルディドルパラパラディドルパラパラパララしているのだろう、と。しかし今回採譜してみてわかったのだが、最後の3連符のRLLを除き、なんとほぼオルタネート(右左交互に叩くこと)で構成されていたのだ!長年謎に包まれていた手品のタネが今ここに明かされました。
スネアとハイハットだけを取り出して手順を書くとこのようになる。
ハイハットオープンのアクセントは左手で叩くことになる。もし右手ハイハット、左手スネアに固定してパラディドルでこなそうとすると、4拍目のスネア3つを打つことができず辻褄が合わないのである。2拍目のスネアのアクセントと同時にハイハットの音がしないことを発見したのが大きなヒントとなった。
そして直後の展開でハイハットでなくライドシンバルを使ったパターンに変わるところがコチラ。
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上記譜面の4小節目(9/8に戻ったところ)から右手がライドシンバルになる。右手をライドシンバルの上空に保持し、左手がライドシンバルに届かないとなると、さすがにオルタネートというわけにはいかない。最初のハイハットの基本パターンとは違って、ここは聞いた印象のとおり右手ライドシンバル、左手スネアに固定してパラディドルで処理している。スネアとライドシンバルだけ取り出して手順を書くとこのようになる。
このあたりのプレイにおいては、左足で踏み鳴らし続けるハイハットを聞き逃す訳にはいきません。以前取り上げたコチラにも登場する巨匠の得意技である。
3小節目、ギターのダブルチョーキング風の(ヘンな)キメの12/8の小節からこの左足ハイハットは始まっている。音量は極めて小さく僅かにしか聞こえないが、これにより効果的にグルーヴがキープされていることが感じ取れる。スネアのゴーストノートと同じ発想である。そしてやはり真似するのはちょっと体力がいるので、まずは体力作り、走り込みから始めなければならないことも感じ取れる。
この部分に限らず、曲中ライドシンバルで刻む部分では必ずこのように左足でハイハットを刻んでいるので単純に足癖なのであろう。巨匠に近づくためにも、ぜひ身に付けたい癖のひとつであることは間違いない。
Red Hot Chili Peppers - Stone Cold Bush はアメリカなら余裕で逮捕されるレベル
- Red Hot Chili Peppers - Stone Cold Bush
- ベースとドラムキックだけで織りなす16分裏の小技が光るキメ
- 8分音符を使った安定感を醸し出すプレイ
- テンポがモタっている?
Red Hot Chili Peppers - Stone Cold Bush
今回はみんなだいすき、Red Hot Chili Peppersの楽曲を取り上げよう!!
レッチリ史上初めてのヒットとなった1989年のアルバム「Mother's Milk」から、「Stone Cold Bush」だ!
- アーティスト: レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 1999/07/28
- メディア: CD
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当アルバムは収録されている音の音圧が若干弱いようで、聞く際にはボリュームを少し上げなければならない。しかし、ボリュームを上げて密室で長時間聞いたりすると、これがまた心が不安定になりそうな凶々しいサウンドが激しく緩急をつけて連続するため、トランス状態にトリップしがちなので注意だ。適度に換気し、音小さめで聞きましょう!
ベースとドラムキックだけで織りなす16分裏の小技が光るキメ
さて「Stone Cold Bush」の冒頭のドラムプレイはこのようになっている。
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イントロはなんと4小節だけ。テンポが速いので曲が始まったと思ったらもうAメロに入っている。早い展開だ。2小節目の奔放なワチャワチャワチャワチャにドラムが「タチーチーチーチ」で応じ、4小節目・8小節目の「てれ~てれ~て~てれ~てれ~て~」の滑らかなキメには、滑るようにドラムを変化させ合わせているところが気持ちいい。みんなで合わせアンサンブルを楽しんでプレイしたい部分だ。
6小節目の3・4拍目は、レッチリお得意、いやFlea(本名 Michael Balzary)お得意の、ベースとドラムキックだけで織りなす16分裏の小技が光るキメ。そのグルーヴとテクニックと二人の確かなアンサンブルに思わずウナってしまう箇所となっている。こんなベースとドラムがいればこりゃ売れるだろうよ!テンポも速いし、彼らみたいにバッチリ合わせてグルーヴを保つには、ベースとドラムの巡り合わせ、相性が良いということも必要となろう。
8分音符を使った安定感を醸し出すプレイ
続いてサビの「She's Stone Cold Bush!」と歌っているところのプレイ。
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本曲のドラムの基本パターンでは、ほぼ全ての小節の1拍目は「ドッッド」とキックしている。Chad Smith(本作のドラマー)がファンキーなパターンを演奏する際の足癖だと思われる。
一方で、ここのサビだけはキックのパターンを意図的に変え、8分音符を使った安定感を醸し出すプレイとなっている。1、2小節目では、1・3拍目に8分二つのキック。3、4小節目では、また少し変化し、ギター・ベースのリズムに合わせた8分のキックに加え、先程登場したベースとドラムキックだけで織りなす16分裏の小技が光るキメ。いやあ凝ってるなあ。
この3、4小節目、どこかで似たものを聞いたことがあったと思い考えたところ、懐かしの東京事変の曲であることがわかった。なんだか心地よいリズムだ、と思ったのは、懐かしい気持ちと重ね合ったからだろうか。
すなわちコチラの、0:52 - 0:55、1:05 - 1:08の部分が似ていると思ったのだがどうだろうか。
細かすぎて伝わらない予感!
そして本曲に戻って一番最後のところのプレイをオマケで載せておこう。
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テンポがモタっている?
本曲は3分しかない短い曲だが、ナイスなキメや構成が凝縮していて非常に魅力的な曲である。バンドでこのままコピーしてみたくなる。ただ一つだけ惜しいのは、右手ライドシンバルのパターンに移行するギターソロ(1:32-)のあたりで、テンポがほんのわずかにモタっており、ほんのわずかに楽曲の推進力が失われているところ。
、、などと思ってしまうのは優等生の完璧主義。こまけぇこたぁいいんだよ!こまけぇことは置いといてただひたすらに爆音で聞いてトリップすべし!!