HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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Funkadelic - You Hit the Nail on the Head のカラクリを実際に検証してみた

雪が降ったりコートが要らなくなったり寒暖の差が大きい今日このごろですが、いかがお過ごしでしょうか。この度はファンクの代名詞から、できそうに見えて簡単にマネできないグルーヴを確認! 

Funkadelicの1972年リリースのアルバム「America Eats Its Young」。楽曲のなかでドラムが目立っていて、ドラマーにとって聞きドコロの多いアルバムである。14曲目の「Wake Up」の後半のグルーヴは必聴であるが、今回は1曲目の「You Hit the Nail on the Head」だ! 

 曲アタマからこんなプレイ!
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オルガンのリフ若干ワイルドなワウギターのカッティングとがからんで、独特の踊りたいグルーヴを産んでいる。ドラムパターン中のハイハットオープンのアクセントで食っているところからアウフタクトで曲がスタートしているのがいい感じだ。ライドシンバルをスティックでヒットしたときの硬い音があまり聞こえず、ライドシンバル自体の刻みでリズムは打ち出していない。一方でライドシンバルの広がる鳴りだけが聴こえ、どことなくゴージャス感が醸し出されている。

特筆するようなドラムパターンではないように思えるのだが、このファンキーさは一体どうなっているんだ!?しばらくきいてみて分かった。オルガンのスタッカートの効いたフレーズもさることながら、根本原因はこんな感じでほんのわずかに16分音符がハネていることだと考えられる

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本曲ドラマーの(恐らく)Ramon "Tiki" Fulwoodは意図的に狙ってはいない。しかし滲み出てしまっている彼の本能のグルーヴ。このタイム感が絶妙だったのである。

 


この絶妙パターンで楽曲は進み、2:54で急に取ってつけたようにゆったりした曲調に変わる。ユーヒダネェ~ルオーンダへェ~(You hit the nail on the head)などとダラダラと歌が入る。その後にスネアの「タッタカタ!」でシャキッと冒頭のパターンに戻る。急にまともになってファンキーさを取り戻す様子が非常にクールである。

(4:21)

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なお本曲の歌詞はこのようになっている。

You Hit the Nail on the Head
Just because you win the fight
Don't make you right
Just because you give
Don't make you good

You Hit the Nail on the Headてのは「キミ、まさに的を射たねー。」といった意味で、つづいて「争いに勝っても正しい訳じゃないんだよ。」などとあり、負け惜しみな感じがするが、何やら深いことを言いたいようである。当アルバム2曲目「If You Don't Like the Effects, Don't Produce the Cause」では、大きな問題には社会正義のため抗議するものの、自分自身の生活は何一つ変えない人々を批判しているらしい。その他の曲にも政治的・道徳的価値判断に係るメッセージがあり、この度Funkadelicは具体的に伝えたいことがある人達なんだということが分かった。ただ単純に楽曲自体の良さや、ブーツィー・コリンズの星型サングラスだけで語り継がれているのではなかったのである。

Z / Shampoohorn - Jesus Clone …悪くないですね…フフ…

再度Zappaの登場!だがしかしZappaはZappaでも今回はムスコのDweezil ZappaAhmet Zappaのほうだ!グループ名は「Z」でアルバム名は「Shampoohorn」である。 

Shampoohorn

Shampoohorn

 

 この「Z」のロゴ、よく見ると彼らの名前の頭文字「A」と「D」の文字が隠れているこことがお分かりだろうか。うまくできてるもんだね!

 

当アルバムではギターがDweezil、キーボードとギターとハーモニーの編曲(?)がおもしろハットでお馴染みのMike Keneally。ドラムはたくさん参加していて、Terry BozzioTal BergmanJoe TraversMorgan ÅgrenToss Panos(など?)。Terry Bozzioは曲で言うとRubberband、Bellybutton、Themの3曲でプレイしていると思う。意外とネット上にあまり情報がなく、またCDも手元になく、よく聞いていた当時に歌詞カード(ライナーノーツ)を読んだときの記憶が頼りである! 

この度はツーバスドコドコかつZappaらしい変拍子がはさまれた構成のJesus Cloneという曲を。ドラマーは不明! 

(0:00-)

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冒頭はツーバスでドコタンドコタンのパターン。ちょっと変わっているなあと思うのは4/4と9/8が交互にやってくるところ。2~4小節目の「A」みたいな記号がついたところはシンバルを叩いた直後にシンバルをミュート、5小節目の丸がついたシンバルは、チャイナシンバルかそれっぽいトラッシュシンバルでお願いします!

 

(0:37-)

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10小節目からの構成が一風変っている。4/4が1小節+5/4が3小節という構成だ。ヘンなの!各小節最初1、2拍目のシンバルでのアクセントのキメ部分以外はフロアタムやキックで低音調理。たまにシンバル、タム、キックのリニアフレーズがはさまれたりと、とても自由なうごきをしている。拍を見失わないか心配である。
18小節目からは4/4が続いてとても安心。そして重い、重たいぞ!ここはオープンハイハット4分音符での重厚メタルプレイのお手本である。右手左手がゆったり大きな4分音符をキープしつつ右足が忙しく間を埋め、ゆったりヘビーなメタルグルーヴを実現。そして26小節目からは、残念!またヘンな構成へ戻ります。

 

当アルバムの曲はメタルの方向性や語彙を基本につくられているものの、ハーモニーが美しい曲(Doomed To Be Togetherなど)があったり、聞きどころが満載。Jesus Cloneよりももっとキツイ変拍子の曲(Kidz Cereal、Shampoohornなど)があったりで、変わった拍子が好きなプログレさん、プログレちゃんにもオススメ。ヘンな構成の曲を聞いておもいっきり困惑しよう!

Steve Vai - Kill The Guy With The Ball よさらば

小さい頃、彼自身のウィニーでよく遊んでいた(※)と思われる師匠のミニアルバム「Alien Love Secrets」から、Deen Castronovoの高速テクニカルドラムプレイが光る「Kill The Guy With The Ball」(邦題:殺戮の舞踏会、拙訳:死球 - あの球であいつを殺せ)を立て続けにドーーーン!!今回は曲の途中の部分をみてみよう!!

 

エイリアン・ラヴ・シークレッツ
 

 

(※)ウィニーで遊ぶとは?!

Alien Love Secretsに収録されている「When i was a little boy」にて語られているストーリーをご参照。http://www.vai.com/forum/viewtopic.php?t=9673

 

(0:55-1:10)

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注目したいのは、6小節目3拍目の3連符。はるかむかし20年以上前にさかのぼる。Alien Love Secretsが発売されたとき、吉祥寺か新宿かのタワー・レコードで試聴した際に、この部分になぜだか非常に感銘を受けたのである。当時、友達に「ここだけテンポが変わっているように聴こえる!」「これを難なくバンドで演奏するのはスゴイ!」などと、しきりに熱っぽく語ったのだが全く想いが伝わらなかったのを覚えている。時空を超え、誰かにいまココで当時の想いが伝われば......

テンポが変わっているように聴こえるのは、5小節目から始まるギターの1拍半フレーズが、音程の上下を変えずに6小節目3拍目でリズムだけ3連符に変わるからである。

年をとって感受性が落ちて感動できなくなってしまったのだろうか、いま改めて聴くと少しありがちなような気もしてきた。。。

 

(1:10-1:22)

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直後の「ダダダダッダッダッダッダッダッダ」のキメと、その次の小節のドラムソロのところ。10小節目の32分音符のプレイは、イントロの32分音符のフレーズに非常によく似ており、6+4の塊が見られる前回の記事をご参照)。ここまでテンポが速いと、さすがの彼も同じフレーズを繰り出さざるを得ないが、32分音符を埋めるだけでもやはり難易度は高い。

12小節目の6連符のプレイは、わかりにくいのだがよく見ると右手+左手+右手+右足の4打が繰り返されていることがわかる。とっさに6連符で空間を埋めようとなれば手だけでタムを回してしまうことが多いと思うが、そこに足を含めたリニアフレーズを入れてくるあたり彼はやはり凄腕である。

 

ところで新宿JAM閉店に伴うライブが12/17に迫っている(過去の記事をご参照)。思い出のライブハウスの最後なので本業のドラムで満を持して参加したいのだが、演奏予定の12曲中、なんと11曲はキーボードで1曲だけドラム!このバンドは一度脱退し、新ドラマーを迎えた数年後に出戻りをしたため、そういえばわたしは現在キーボードでの加入だったのである。若いときの軸がブレッブレの行動が今ここに悔やまれるのであった!