HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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YOU!レゲエ しちゃいなYO!

 

暖かくなりもうすぐ夏。夏といえば無論レゲエ。ということでいくつかのレゲエサウンドにおけるドラミングコンセプトをチェックだ! 

レジェンド<30周年記念盤>(Blu-ray Audio付)

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Reggaeはジャマイカで多様な音楽の影響を受けて成立したポピュラー音楽で、2018年にはユネスコ無形文化遺産に登録されたそうである。Wikipediaに詳しくドラムに関する記載があったのでそれに沿って確認しよう。 

レゲエ - Wikipedia

レゲエにおけるドラムビートは、「ワンドロップ (One Drop)」、「ロッカーズ (Rockers)」、「ステッパーズ (Steppers)」などに分類することができる。

とある。3つ挙げているそばから4つの項目があるのが釈然としないもののWikipediaをみるまで知らなかったことばかりであったので勉強になった。念のため英語版のWikipedia Reggae - Wikipedia と比較すると、英語版にはない「フライング・シンバル」の説明が日本語版には記載されていたり、矛盾するような記載があったので対比して引用することにした。

ワンドロップ

1拍目にアクセントがなく、3拍目のみがスネアドラムのリムショットバスドラムによって強調される[20]。カールトン・バレットが開発したとされるこのリズムは[注釈 3][20]、レゲエを特徴づける要素の一つである[20]。代表的楽曲はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの「ワン・ドロップ (One Drop)」など。

With the One drop, the emphasis is entirely on the backbeat (usually on the snare, or as a rim shot combined with bass drum). Beat one is empty except for a closed high hat commonly used, which is unusual in popular music. There is some controversy about whether reggae should be counted so that this beat falls on two and four, or whether it should be counted twice as fast, so it falls on three. An example played by Barrett can be heard in the Bob Marley and the Wailers song "One Drop". Barrett often used an unusual triplet cross-rhythm on the hi-hat, which can be heard on many recordings by Bob Marley and the Wailers, such as "Running Away" on the Kaya album.

レゲエ風にドラムを演奏するとなればまずはこれになるだろうか。Bob Marley and the Wailersの楽曲"One Drop"のワンドロップパターンはこのような形だ。

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一方で、どのレゲエの楽曲にもちょっとしたパーカッションが入っており、空間的な広がり、賑やかさ、ガヤガヤ感を醸し出す重要な要素となっている。そのためパーカッションなしで本格的なBob Marley and the Wailers的な雰囲気を出すことはできないのではないかと思っている。まずはパーカッション人口が少なくて手軽に導入できず、そこで一つハードルが上がることになる。

フライング・シンバル

ワンドロップのドラムに、通常はギターやキーボードが強調する2拍目、4拍目をハイハットのオープンショットによって強調する奏法[21]。1974年にカールトン・サンタ・デイヴィス (en) が開発し、1975年まで流行した[21]。代表曲はジョニー・クラーク (en)「ムーブ・アウト・オブ・バビロン (Move Out of Babylon)」など[21]。

こちら英語版Wikipediaにはないが、日本語版に記載の通りワンドロップの2拍目、4拍目がオープンハイハットになっているパターンである。代表曲Johnny Clarkeの"Move Out of Babylon"を聴くとその通りであった。

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なお、レゲエでなくてハワイアンと言われたほうがふさわしいくらいこの曲は南国である。柔らかなボーカルとその軽やかなビブラートは必聴である。

 ロッカーズ

ルーディメンツを下敷きにしたマーチングバンド風のフレーズをスネアドラムで叩く。その戦闘的にも聞こえるビートから「ミリタント・ビート」とも呼ばれている[22]。スライ・ダンバーによって開発された[22]。代表的楽曲はマイティ・ダイアモンズ「アイ・ニード・ア・ルーフ (I Need A Roof)」(1976年)など。

An emphasis on the backbeat is found in all reggae drumbeats, but with the Rockers beat, the emphasis is on all four beats of the bar (usually on bass drum). This beat was pioneered by Sly and Robbie, who later helped create the "Rub-a-Dub" sound that greatly influenced dancehall. Sly has stated he was influenced to create this style by listening to American drummer Earl Young as well as other disco and R&B drummers in the early to mid-1970s, as stated in the book "Wailing Blues". The prototypical example of the style is found in Sly Dunbar's drumming on "Right Time" by the Mighty Diamonds. The Rockers beat is not always straightforward, and various syncopations are often included. An example of this is the Black Uhuru song "Sponji Reggae".

日本語版と英語版の説明と大きく違うのでちょっと混乱。とりあえずいろいろな捉え方があるのだと理解してみることにしよう。日本語版に記載の「ミリタント・ビート」に該当するような例は発見することができなかったが、Mighty Diamondsの"I Need A Roof"と"Right Time" は英語版の説明に近く理解できた。ロッカーズとは、典型的なロックドラムのようにハイハットで4分音符にアクセントをつけているパターンのようである。Mighty Diamondsの"Right Time"のパターンはこのような感じである。

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ステッパーズ

スライ・ダンバーが開発した4拍子の4拍すべてに固い4つ打ちのバスドラムを打つリズムである[23][24]。代表的楽曲はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ「エクソダス」など。この曲でカールトン・バレットは、4分の4拍子を刻む4つ打ちのバスドラムに8分の6拍子を刻むハイハットの3連打を絡めている。

In Steppers, the bass drum plays every quarter beat of the bar, giving the beat an insistent drive. An example is "Exodus" by Bob Marley and the Wailers. Another common name for the Steppers beat is the "four on the floor". Burning Spear's 1975 song "Red, Gold, and Green" (with Leroy Wallace on drums) is one of the earliest examples. The Steppers beat was adopted (at a much higher tempo) by some 2 Tone ska revival bands of the late 1970s and early 1980s.

これもレゲエ風を強く打ち出せるパターンと思われる。バスドラム4つ打ちの上に、ハイハットを特定のタイミングでポリリズミックに打つことによりそれっぽくなる。なお、一つ目のワンドロップのパターンにおいてもこのハイハットが入ることもあり(Bob Marley and the Wailersの"Running Away" など)、ステッパーズだけの特徴というわけではなさそうだ。Bob Marley and the Wailersの"Exodus"は以下のようにステッパーズしている。

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レゲエ風ドラミングのヒント

また英語版にはレゲエ風ドラミングのヒントがいくつか書いてあったのでこちらも参考になる。

フィルインではクライマックスになってもシンバルをたたかない

バスドラムの中にたくさんものを詰め込んで、深くドスンとパンチのあるタイトな音にする

ライドシンバルは使わない。ハイハットでタイムキープする。アクセントにはディケイの早い(音が早く鳴りやむ)薄いクラッシュシンバルを使う

ということで今回Wikipediaの記載の整合性がとても気になってしまって精査し始めてしまった。兎も角、このようないくつかの分類を知っておくと、より幅広いスタイルで演奏ができるであろう。レゲエ風にしてみよう、からの即ワンドロップ、とは別のアプローチが今後はとれそうである。

若者の Frank Zappa - Hands With A Hammer 離れについて

 

Frank Zappa - Hands With A Hammer

この度はまたまたまたFrank Zappaのお時間。これまでの動向から、ほぼ需要がないことが判明しているにもかかわらずご紹介!You Can't Do That On Stage Anymore (ycdtosa) VOL.3から、Terry Bozzioのドラムソロが一つの曲としてクレジットされているものである。

Hands With A Hammer

Hands With A Hammer

 

同アルバムの別の曲を紹介した過去の記事はコチラ 

さあ、極めて限られた少数の読者へ向け、届けHands With A Hammer!! 

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大きな振れ幅のダイナミクス

基本的にハイハットとスネアとキックだけを使って、弱いところは弱く、特定の箇所でとても強く、大きな振れ幅のダイナミクスをつけて演奏する。明らかに強調されているので、キックの音符にアクセントをつけたところさえある。

ほぼ見た目通り、ハイハットは右手、スネアは左手で、パラディドルを組合わせている。なお「let ring」と書いてあるところは、ハイハットオープンを鳴らしっぱなしにすることを表す。

モチーフ展開とオマケ付け過ぎフィルイン

10小節目、17小節目、19小節目では「チーチーチチーチチー」といったハイハットオープンクローズのフレーズが登場する。そしてこのフレーズ、もといモチーフが21、22、23小節目で連続し、24小節目のヂヂヂヂ!ヂヂヂヂ!でついに昇華!クラシック音楽のバックグラウンドを持つ彼の美しいモチーフ展開が確認できる。

28小節目、32小節目はシンプルながらパワーのあるさわやか爽快フィルインである。その直後35小節目では、タム回しのフィルインであるはずのところ、フロアタムに到達した後にドッドコドッドコとオマケを付けまくって長くなり結果的に変拍子となってしまっているのがクールかつ柔軟なプレイである。そのあとは、テンポがなくなってしまうので楽譜はここまで!

日本経済再興への誓い

本曲はZappaがツアーで日本に来たときのライブ録音であるようだ。会場は厚生年金会館って書いてあったかな?厚生年金会館といった場所にZappaが来るってのは、なんだか似つかわしくない。ライブステージというよりは、ホールとよばれるような場所にだ。かつてのJapan as Number Oneの時代だったから、音楽ビジネスとして日本はツアーの拠点として外せなかったのかもしれない。日本向けのCDにはJapan bonus track収録とかも多かったし。昨今では悲しいかなJapan passingが続いている状況である。イイ感じのアーティストがたくさんやって来るように、日本経済を再興させアジア圏での重要性を強く示すことが急務である。 

ジャパン・アズ・ナンバーワン

ジャパン・アズ・ナンバーワン

 

行列のできる 村田陽一/Solid Brass - Some Skunk Funk

 

村田陽一/Solid Brass - Some Skunk Funk

心が乱れ、前回と前々回は寄り道してしまった。気を取り直してドラムや音楽について記事を書こう!!

今回は、村上"ポンタ"秀一氏の参加するPonta Box、ではなかった、村田陽一 / Solid BrassのアルバムDouble Edgeよりこの曲、Some Skunk Funk!! 

Double Edge

Double Edge

 

Some Skunk Funkといえばご存知Brecker Brothersの楽曲である。 

ヘビー・メタル・ビ・バップ(期間生産限定盤)

ヘビー・メタル・ビ・バップ(期間生産限定盤)

 

原曲のTerry Bozzioのパワー爆裂サウンドもたまらないが、本作では多彩で時に鋭利なポンタ氏のプレイが存分に楽しめる。そしてあの例のフィルももちろん登場だ。

楽曲のキメに沿って多彩なフレーズで楽しませる

冒頭はこのようになっている。

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楽曲のキメに沿って、多彩なフレーズで楽しませる。フレーズの中にタムやスネアがあっても、わりとお構いなしにキックが入っている。キックはシンバルやハイハットと同時でなければいけない、という自分の固定観念に少し気付かされた思いである。

「タチタチタド!」と「ドッタララッドタチ!」

つづいて、曲中の第3のテーマに入る前のダダダダッダッダッダッダーダのところから。

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この1、2小節目のキメは曲中数回出てきており、2小節目の3拍目ではすべてこのように6連符の連打が入っているのがかっこよい。原曲にはないフレーズであり、そのアイデアがすばらしいところである。

3小節目からが第3のテーマ。スリップしたスネアバックビート(1拍目の4つ目の16分音符)が鋭くファンクグルーヴを形作る。ここで譜面上で赤くしている音符がご注目。ポンタ氏のみが繰り出す特徴的なフレーズである。6小節目ではタチタチタド!フィルインとして成立させるために、目立たせることを意図して強くアクセントをつけて演奏する。ポンタ氏以外のドラマーからはまず聞かない独特のフレージングである。

8小節目はこちらもポンタ氏独自の名フレーズ。ドッタララッドタチ!本曲には登場しないが、ドッタララッドタチタチ!の時もある。このフレーズをフィーチャー(揶揄?)して、多数のドラマーが「ドッタララッドタチタチ!」と口で言う、という何らかの企画があったと記憶しているが何だったか忘れてしまった。ドラムマガジンだったかな?

「ドッタララッドタン!」

つづいて、第3のテーマの前のキメで、本曲の一番最後にあるもの。 

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デーデーデデデデデデデデ、ッデーーーーーのところ、なんと2小節目、ポンタ氏がツーバス(ツインペダル)で局所的にドコドコドコドコしているのが確認できる。これは珍しい。そして3小節目でポンタ氏独自の名フレーズが同じく登場している(赤くしている音符)。ドッタララッドタチ!ではなく、ドッタララッドタン!と最後がフラムでスネアのアクセントになっているケースである。

管楽器のほうは超絶難しい

Some Skunk Funkを管楽器とドラムだけで演奏しようってのはチャレンジングである。原曲を聴けば管楽器とドラムだけではとてもできるようには思えない。しかし、彼らは原曲のファンクネスを新たな観点で実現し、数あるカバーの中でも最高峰のものとなっている。原曲での中盤にあるMichael Breckerのソロをほぼそのまま管楽器アンサンブルで演奏しているのは圧巻である。以前にジャズバンドのメンバーと一緒にこの曲をやろうとしたが断念したことを思い出した。CからBまでの12種類の音程が全部でてくるし、あれやこれやで管楽器のほうは超絶難しいとのことであった。どなたかできる人いませんか!?私もやってみたいのでお知らせください。バンドやろうぜ!