HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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人生がときめく Red Hot Chili Peppers - Blood Sugar Sex Magik の魔法

 

Red Hot Chili Peppers - Blood Sugar Sex Magik

今回は大人気、Red Hot Chili Peppersの楽曲を再度チェック!前回のレッチリの記事と近しい約30年前のアルバムでまた古くて恐縮であるが、1991年リリースの問題作Blood Sugar Sex Magikからアルバム同タイトルの曲Blood Sugar Sex Magik! 

前回のレッチリの記事はコチラ 

 

Chad Smithのスキルの高さをうかがわせるプレイ

冒頭からのドラム基本パターンはこのような形になっている。

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テンポは73bpmくらいで、ゆったりヘヴィーなグルーヴがたいへん心地よい。一拍目の16分音符4つ目のハイハットオープンは、もしかしたら人によってはバランスがとりにくいかもしれないが、楽曲を特徴づける極めて重要なハイハットオープンなので外せないところである。非常に安定感があってChad Smithのスキルの高さをうかがわせるプレイである。

全ドラマーが目指すべき理想的なタンタカラドン

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安定感グルーヴが続いてまさにサビ直前、定番の「タンタカラドン」。(フラム付き)スネア+スネア+ハイタム+フロアタム+キックをこのように音符に乗せて「タンタカラドン」である。フィルがバッチリ過ぎて音符に赤色を付けてしまった。よくある形のフィルではあるものの、ゆったりグルーヴに身を任せて油断していたところ突如のタンタカラドンがかっこよい。タイム感がパーフェクトで全ドラマーが目指すべき理想的なタンタカラドンである。もう一つ後半のサビの前、2:23にもタンタカラドンがあり(正確にはタンタカラドンドン)、こちらも同じくパーフェクト。そういえば、レッチリって、〇ッチリっていう日本語に頻出のフレーズ(語感)だから親しみやすいのだろうか。バッチリ、カッチリ、キッチリ、てっちり、もっちり。それはどうでもよくて、タンタカラドンの次のサビのところのパターンはライドシンバルで刻み、ここまでのハイハットパターンとは異なり16分音符裏表にキックとスネアが入ってくる。どちらかと言えばChad Smithの得意なパターンはこちらであろうか。同じくゆったりテンポの中で走らずモタらずの安定感がすばらしい。

彼はプロフェッショナル

曲の最後のほうでちょっとすてきなフィルが。

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最高潮に盛り上がった結果、2小節目のポリリズム的なアクセントと32音符のフィルがちょっとすてきである。最高潮になって野生の本能を解放してもよさそうであるところ、焦らずテンポが維持されているのはやはりスキルフルである。おそらくには、楽曲をイイ感じにするために冷静に最高潮のフリをしているのではないだろうか。そう、彼は感情を自らの意思によりコントロールできるプロフェッショナルなのである。

デスブログ的な力がついに

余談であるが前回に軽い気持ちで有名人へのオマージュとして記事タイトルをつけたところ、その数日後にそのかたの入院の報道などがあり驚いた。かのデスブログ的な力がついに宿ったか。もちろんなんの恨みもないのだが、今回のタイトルでは片付けコンサルタントを狙い撃ち!

YOU!レゲエ しちゃいなYO!

 

暖かくなりもうすぐ夏。夏といえば無論レゲエ。ということでいくつかのレゲエサウンドにおけるドラミングコンセプトをチェックだ! 

レジェンド<30周年記念盤>(Blu-ray Audio付)

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Reggaeはジャマイカで多様な音楽の影響を受けて成立したポピュラー音楽で、2018年にはユネスコ無形文化遺産に登録されたそうである。Wikipediaに詳しくドラムに関する記載があったのでそれに沿って確認しよう。 

レゲエ - Wikipedia

レゲエにおけるドラムビートは、「ワンドロップ (One Drop)」、「ロッカーズ (Rockers)」、「ステッパーズ (Steppers)」などに分類することができる。

とある。3つ挙げているそばから4つの項目があるのが釈然としないもののWikipediaをみるまで知らなかったことばかりであったので勉強になった。念のため英語版のWikipedia Reggae - Wikipedia と比較すると、英語版にはない「フライング・シンバル」の説明が日本語版には記載されていたり、矛盾するような記載があったので対比して引用することにした。

ワンドロップ

1拍目にアクセントがなく、3拍目のみがスネアドラムのリムショットバスドラムによって強調される[20]。カールトン・バレットが開発したとされるこのリズムは[注釈 3][20]、レゲエを特徴づける要素の一つである[20]。代表的楽曲はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの「ワン・ドロップ (One Drop)」など。

With the One drop, the emphasis is entirely on the backbeat (usually on the snare, or as a rim shot combined with bass drum). Beat one is empty except for a closed high hat commonly used, which is unusual in popular music. There is some controversy about whether reggae should be counted so that this beat falls on two and four, or whether it should be counted twice as fast, so it falls on three. An example played by Barrett can be heard in the Bob Marley and the Wailers song "One Drop". Barrett often used an unusual triplet cross-rhythm on the hi-hat, which can be heard on many recordings by Bob Marley and the Wailers, such as "Running Away" on the Kaya album.

レゲエ風にドラムを演奏するとなればまずはこれになるだろうか。Bob Marley and the Wailersの楽曲"One Drop"のワンドロップパターンはこのような形だ。

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一方で、どのレゲエの楽曲にもちょっとしたパーカッションが入っており、空間的な広がり、賑やかさ、ガヤガヤ感を醸し出す重要な要素となっている。そのためパーカッションなしで本格的なBob Marley and the Wailers的な雰囲気を出すことはできないのではないかと思っている。まずはパーカッション人口が少なくて手軽に導入できず、そこで一つハードルが上がることになる。

フライング・シンバル

ワンドロップのドラムに、通常はギターやキーボードが強調する2拍目、4拍目をハイハットのオープンショットによって強調する奏法[21]。1974年にカールトン・サンタ・デイヴィス (en) が開発し、1975年まで流行した[21]。代表曲はジョニー・クラーク (en)「ムーブ・アウト・オブ・バビロン (Move Out of Babylon)」など[21]。

こちら英語版Wikipediaにはないが、日本語版に記載の通りワンドロップの2拍目、4拍目がオープンハイハットになっているパターンである。代表曲Johnny Clarkeの"Move Out of Babylon"を聴くとその通りであった。

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なお、レゲエでなくてハワイアンと言われたほうがふさわしいくらいこの曲は南国である。柔らかなボーカルとその軽やかなビブラートは必聴である。

 ロッカーズ

ルーディメンツを下敷きにしたマーチングバンド風のフレーズをスネアドラムで叩く。その戦闘的にも聞こえるビートから「ミリタント・ビート」とも呼ばれている[22]。スライ・ダンバーによって開発された[22]。代表的楽曲はマイティ・ダイアモンズ「アイ・ニード・ア・ルーフ (I Need A Roof)」(1976年)など。

An emphasis on the backbeat is found in all reggae drumbeats, but with the Rockers beat, the emphasis is on all four beats of the bar (usually on bass drum). This beat was pioneered by Sly and Robbie, who later helped create the "Rub-a-Dub" sound that greatly influenced dancehall. Sly has stated he was influenced to create this style by listening to American drummer Earl Young as well as other disco and R&B drummers in the early to mid-1970s, as stated in the book "Wailing Blues". The prototypical example of the style is found in Sly Dunbar's drumming on "Right Time" by the Mighty Diamonds. The Rockers beat is not always straightforward, and various syncopations are often included. An example of this is the Black Uhuru song "Sponji Reggae".

日本語版と英語版の説明と大きく違うのでちょっと混乱。とりあえずいろいろな捉え方があるのだと理解してみることにしよう。日本語版に記載の「ミリタント・ビート」に該当するような例は発見することができなかったが、Mighty Diamondsの"I Need A Roof"と"Right Time" は英語版の説明に近く理解できた。ロッカーズとは、典型的なロックドラムのようにハイハットで4分音符にアクセントをつけているパターンのようである。Mighty Diamondsの"Right Time"のパターンはこのような感じである。

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ステッパーズ

スライ・ダンバーが開発した4拍子の4拍すべてに固い4つ打ちのバスドラムを打つリズムである[23][24]。代表的楽曲はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ「エクソダス」など。この曲でカールトン・バレットは、4分の4拍子を刻む4つ打ちのバスドラムに8分の6拍子を刻むハイハットの3連打を絡めている。

In Steppers, the bass drum plays every quarter beat of the bar, giving the beat an insistent drive. An example is "Exodus" by Bob Marley and the Wailers. Another common name for the Steppers beat is the "four on the floor". Burning Spear's 1975 song "Red, Gold, and Green" (with Leroy Wallace on drums) is one of the earliest examples. The Steppers beat was adopted (at a much higher tempo) by some 2 Tone ska revival bands of the late 1970s and early 1980s.

これもレゲエ風を強く打ち出せるパターンと思われる。バスドラム4つ打ちの上に、ハイハットを特定のタイミングでポリリズミックに打つことによりそれっぽくなる。なお、一つ目のワンドロップのパターンにおいてもこのハイハットが入ることもあり(Bob Marley and the Wailersの"Running Away" など)、ステッパーズだけの特徴というわけではなさそうだ。Bob Marley and the Wailersの"Exodus"は以下のようにステッパーズしている。

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レゲエ風ドラミングのヒント

また英語版にはレゲエ風ドラミングのヒントがいくつか書いてあったのでこちらも参考になる。

フィルインではクライマックスになってもシンバルをたたかない

バスドラムの中にたくさんものを詰め込んで、深くドスンとパンチのあるタイトな音にする

ライドシンバルは使わない。ハイハットでタイムキープする。アクセントにはディケイの早い(音が早く鳴りやむ)薄いクラッシュシンバルを使う

ということで今回Wikipediaの記載の整合性がとても気になってしまって精査し始めてしまった。兎も角、このようないくつかの分類を知っておくと、より幅広いスタイルで演奏ができるであろう。レゲエ風にしてみよう、からの即ワンドロップ、とは別のアプローチが今後はとれそうである。

若者の Frank Zappa - Hands With A Hammer 離れについて

 

Frank Zappa - Hands With A Hammer

この度はまたまたまたFrank Zappaのお時間。これまでの動向から、ほぼ需要がないことが判明しているにもかかわらずご紹介!You Can't Do That On Stage Anymore (ycdtosa) VOL.3から、Terry Bozzioのドラムソロが一つの曲としてクレジットされているものである。

Hands With A Hammer

Hands With A Hammer

 

同アルバムの別の曲を紹介した過去の記事はコチラ 

さあ、極めて限られた少数の読者へ向け、届けHands With A Hammer!! 

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大きな振れ幅のダイナミクス

基本的にハイハットとスネアとキックだけを使って、弱いところは弱く、特定の箇所でとても強く、大きな振れ幅のダイナミクスをつけて演奏する。明らかに強調されているので、キックの音符にアクセントをつけたところさえある。

ほぼ見た目通り、ハイハットは右手、スネアは左手で、パラディドルを組合わせている。なお「let ring」と書いてあるところは、ハイハットオープンを鳴らしっぱなしにすることを表す。

モチーフ展開とオマケ付け過ぎフィルイン

10小節目、17小節目、19小節目では「チーチーチチーチチー」といったハイハットオープンクローズのフレーズが登場する。そしてこのフレーズ、もといモチーフが21、22、23小節目で連続し、24小節目のヂヂヂヂ!ヂヂヂヂ!でついに昇華!クラシック音楽のバックグラウンドを持つ彼の美しいモチーフ展開が確認できる。

28小節目、32小節目はシンプルながらパワーのあるさわやか爽快フィルインである。その直後35小節目では、タム回しのフィルインであるはずのところ、フロアタムに到達した後にドッドコドッドコとオマケを付けまくって長くなり結果的に変拍子となってしまっているのがクールかつ柔軟なプレイである。そのあとは、テンポがなくなってしまうので楽譜はここまで!

日本経済再興への誓い

本曲はZappaがツアーで日本に来たときのライブ録音であるようだ。会場は厚生年金会館って書いてあったかな?厚生年金会館といった場所にZappaが来るってのは、なんだか似つかわしくない。ライブステージというよりは、ホールとよばれるような場所にだ。かつてのJapan as Number Oneの時代だったから、音楽ビジネスとして日本はツアーの拠点として外せなかったのかもしれない。日本向けのCDにはJapan bonus track収録とかも多かったし。昨今では悲しいかなJapan passingが続いている状況である。イイ感じのアーティストがたくさんやって来るように、日本経済を再興させアジア圏での重要性を強く示すことが急務である。 

ジャパン・アズ・ナンバーワン

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