HBのとってもくわしいドラムレビュー

HBのとってもくわしいドラムレビュー

ドラムスコHBがさまざまな楽曲のドラムプレイをとってもくわしく解説する

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酒と泪と男と Wynton Marsalis - Autumn Leaves


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今回は当ブログおそらく初となるジャズドラム!Wynton Marsalisの1987年リリースのアルバムMarsalis Standard Time, Vol.1からご紹介。ドラムを担当するのはJeff "Tain" Wattsだ。 

スタンダード・タイム Vol.1

スタンダード・タイム Vol.1

 

シンプルかつ強引に1から8まで一つずつ増えていっている

当アルバムから、スタンダード中のスタンダードAutumn Leavesを確認する。しかしテーマの構成のアレンジがまったくスタンダードではない。曲のアタマからドラムはこのような形だ!

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なお4ビートジャズを楽譜にする場合は一般的にはこの倍の書き方、つまり上記の1小節分を、テンポ2倍の2小節分として記載するものと思うが、ここではトリックを分かりやすくするためテンポ半分の書き方をした。swingの指定もあいまいになるので無しとした。

余りお目にかからない小節全体にかかる3連符、5連符、6連符、7連符、そのさらに内側に3連符が入ってくる。楽譜にして見てみると複雑なのだが、実際は見た目より単純な発想である。曲をいちど聴いてみればすぐにわかるはず。そう、シンプルかつ強引に1から8まで一つずつ増えていっているのである。ライドシンバル(およびベース)の主要なビートだけ書き出すとこのようになる。

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テーマの終わりで少しずつ減ってもとに戻る

ライドシンバル8回の高速4ビートでテーマの終わりまでくると、こんどは少しずつ減っていくようになっている。

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ライドシンバル(およびベース)の主要なビートだけ書き出すとこのようになる。

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8-6-4-3-2。ここでテーマのアタマに戻ってまた1-2-3-4-5-6-7-8。ありそうでなかった構成だ。思いついても実際にはやらないであろう構成をやってしまっているのは、スタンダード過ぎて飽きてしまったミュージシャンたちの貫禄のなせるわざ!

忍耐が要求されるドラム採譜

本曲のような特殊なことがあれば別であるが、ジャズのドラムって楽譜に起こしたりどうこうしたりし難いところがある。別ジャンルと比較して自由に演奏されることが多く、採譜が困難な上、そのようなインプロビゼーションを正確に書き起こしてもあまり意味をなさないからだ。それでもなお、20年以上も前だがドラムマガジンMiles DavisのアルバムFour & Moreの中の曲だったか、ジャズドラム一曲丸ごと完全な楽譜が掲載されていたのを思い出した。しかも自由奔放でお馴染みのTony Williamsのプレイ。採譜する労力を知るほどに、これがいかに忍耐が要求される仕事であったか想像に難くない。自分のようにワンオペでなければそうでもないのかな。当ブログは月刊とは言えそろそろワンオペがつらくなってきたぞ!